根拠のない母乳育児の食事指導

助産師に母乳の相談をすると、お食事について細かく指導を受けることがあります。
具体的には、
「母乳がたくさん出すぎるから、水分は少なめに」
「体を冷やすからスイカやバナナはダメ」
「卵は乳質を悪くするから食べないように」
「青い魚はアレルギーになるから食べたらダメ」
「お肉は乳質を悪くするからダメ」
「ヨーグルト・牛乳など乳製品は一切ダメ」…などなど。
「乳腺炎にならないように和食を中心に、脂っぽい食事や甘い物を避ける」という指導が広がった背景として、1980年代に発売された「桶谷式乳房管理法」の書籍や、1990年ごろに始まった「日本母乳の会」の考え方の影響があるように思います。

このころに出版された書籍には「乳質※」という表現が使われており、食事の具体的なアドバイスが書かれています。

例えば、

☆「桶谷そとみの母乳育児の本」1987年 主婦の友社

桶谷そとみの母乳育児の本

乳質が悪いおっぱいだと赤ちゃんがぐずりやすくなり、脂漏性湿疹がひどくなります。乳質をよくするためには和食を中心とし『米7.野菜3、魚を少し』が理想的です。

☆「新 母乳育児なんでもQ&A」2002年 婦人生活社

新 母乳育児なんでもQ&A

あなたの食べ物にも注意してください。おっぱいには牛乳がいいとばかり、毎日数本飲んでいた方がいましたが、よくつまります。牛乳をやめてみたらあまりつまらないとのこと。乳脂肪など動物性脂肪は乳腺のつまりを起こしやすくします。 魚、植物性脂肪を中心にした食生活を心がけてください。

お母さんが食べる物で、乳質は微妙に変わります。1ヶ月ごろから出始める湿疹のほとんどは乳児湿疹と呼ばれるもので、アトピー性皮膚炎とはあまり関係ないものです。
 この乳児湿疹は出やすい子とそうでない子がいます。多くはあせもからですが、どちらかといえば太った子どもに多いのと、甘いもの、果物、油ものが好きなお母さんに多いものです。

これらの本が出版されたころの社会背景として、自宅出産から病院出産が増え、大家族から核家族へと社会が変わったこともあり、母乳の食事について書かれた本は注目されました。そして次第に、母乳育児中の食事についての指導が広まったのでは…と推測します。

これらの本には「○○は理想的です」「心がけてください」と書かれてはいるものの、具体的に「○グラム食べたら」とか「つまる人は○%」とは書かれていません。そしてこの「乳質」や「乳質の良し悪し」とはどのような状態を指すのか、さらにそれはどのようなことに影響するのかについては、今まで科学的に検証されたことはありません(私の調べた範囲では、ですが)。助産師自身の感覚的な判断で「質」を評価することがほとんどなのです。

そのような母乳育児の栄養指導への疑問視も増え、2008年「ABM臨床指針第4号 乳腺炎 The Academy of Breastfeeding Medicine Protocol Committee」の中には、 “特定の食事内容がヒトにおける乳腺炎のリスク因子となるエビデンスは存在しない”と書かれています。
そのように「乳腺炎になった場合、特定の食事との因果関係はない」という考え方が一般的となりつついます。

チョコレートを食べて吹き出物が出る人もいれば平気な人もいます。かき氷を食べて下痢をする人がいればたくさん食べても平気な人もいます。体感的な症状には個人差があるので、画一的な「○○はダメ」指導は正確性に欠けていることがあるのではないでしょうか。

ただでさえ慣れない赤ちゃんとの生活。面倒くさいことやストレスとなることは減らしてほしい。「食べたいものを常識的な範囲でたくさん食べる」「おいしいと感じながら食べる」ことを大切にして、幸せな母乳育児をしてほしいと思っています。

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