妊娠初期の異常、胞状奇胎の予防・症状・治療について

妊娠初期に起こる異常。胞状奇胎とは?

胞状奇胎

さまざまな疾患や病気に見舞われる可能性のある・・・妊娠。妊娠して、無事にかわいい我が子を出産するというのは本当に奇跡的なこと。なんのトラブルも経験せず出産を迎えるという人の方が少ないほど、妊娠・出産にはさまざまなトラブルがつきものです。特に妊娠してすぐ、妊娠初期には赤ちゃんに重大な影響をおよぼすことが多くあります。

赤ちゃんのもととなる卵子と精子が合体した受精卵はどんどん分裂していって、たくさんの細胞を作り出していきます。細胞分裂を繰り返しながらママのおなか、つまり子宮におりたって着床することで、妊娠が成立します。

受精卵

しかし、妊娠が成立したとしても何らかの理由で流産となってしまうことも…。妊娠初期の流産についてはこちら

そして、赤ちゃんとなるはずだった受精卵に異常が起こり、うまく育たず、まるでぶどうの粒のようにたくさん増殖してしまうということがあります。もちろん、この状態になるともうその受精卵は赤ちゃんに育つことはなくなり、このぶどう状の物体をすべて出さなくてはなりません。これを「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」といいます。

胞状奇胎っていったいどんな病気?

我が子になるはずだった受精卵が、まるでぶどうのようになってしまうなんて…。「ぶどう子」とも呼ばれることがある胞状奇胎。とてもショッキングなことですが、どんな方にも起こりうる妊娠中のトラブルで染色体異常が原因となっています。胞状奇胎には2つの種類があり、それぞれできる原因が違っています。

受精卵

全胞状奇胎

受精にはママの卵子とパパの精子のふたつが必要ですよね。この卵子と精子の中は「核」というものが存在しています。核は小さな細胞の中で遺伝情報を保管するための場所で、細胞にとってものすごく重要なものです。全胞状奇胎は、卵子の中にある核がなんらかの原因でなくなってしまう・もともと核を持たない卵子のどちらかに、精子が受精してしまうと起こります。

受精では卵子と精子が合体して細胞分裂をしていくはずなのに、卵子がないまま精子だけで細胞分裂が始まってしまいます。正常な受精卵の染色体というのは、パパの精子がもっている23本の染色体、ママの卵子がもっている23本の染色体を合わせた46本になります。しかし、卵子の23本の染色体がなくパパの23本の精子が増えて、46本の染色体をもった異常なものが生まれてしまいます。

ですから、DNAを調べるとママの遺伝子情報がまったくない…ということになります。染色体が46本あるからいいんじゃないの?と思うかもしれませんが、パパだけの遺伝情報では正常な胎児になることはありません。赤ちゃんをつくることができないまま、周りの組織だけはどんどん増えていってしまいます。

赤ちゃんが育つために欠かせない器官のひとつに「胎盤」があります。胎盤は赤ちゃんとママとの酸素や栄養・老廃物の交換をおこなうところで、胎盤の中には「絨毛(じゅうもう)」というものがびっしりとあります。この絨毛の組織が異常に増え、無数の水ぶくれがぶどうのようにできてしまう…これが、全胞状奇胎です。

部分胞状奇胎

先ほどの全胞状奇胎については、卵子の核がない・卵子がないことで起こるものでした。部分胞状奇胎は、正常な卵子1つに対して2つの精子が同時に受精することで起こります。

3つの染色体がひとつの卵としてつくられるので、染色体の数は全部で69つあることになり、やはりこちらも染色体異常としてうまく育ちません。ただ、全胞状奇胎と違って卵子と精子の染色体が正常な部分もありますので、すべてが胞状奇胎になるというわけではありません。赤ちゃんの部分と絨毛の異常増殖部分がありますが、ごくごくまれに一卵性双生児(双子)の片方が健康な赤ちゃん、もう片方が胞状奇胎などの奇形という場合も起こるようです。

部分胞状奇胎の場合、赤ちゃんは心拍が確認されたりそのまま成長することもできます。しかし、基本的にはやはり妊娠を継続することができません。胞状奇胎は放っておくとさまざまなリスクが考えられるからです。

胞状奇胎はどんな症状なの?

胞状奇胎はどんな症状があらわれるのでしょうか?妊娠すると、時期や程度に個人差はありますが、妊娠4週ごろからだんだんつわりの症状があらわれはじめます。つわりについてはこちら

しかし、胞状奇胎の場合はつわりがとてもひどくあらわれるという傾向があります。嘔吐やむかつき、だるさといった一般的なつわりがあらわれたかと思えば、不正出血や腹痛など切迫流産のような症状が一緒にあらわれます。切迫流産(切迫早産)についてはこちら

切迫流産は流産しかかっている状態ということですが、通常の切迫流産の場合にはhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが少なくなるために、つわりが軽くなります。(※hCG…妊娠中にのみ分泌されるホルモンで、妊娠を継続させるためのホルモンが作られるように指令を出すホルモン)

ですが、胞状奇胎の場合には絨毛部分からhCGが大量に分泌されるためつわりが重く、さらに絨毛部分が子宮内に異常に増えてしまうので不正出血などの切迫流産の症状が起こるようになります。

症状はこの限りではなく、hCGの量も正常通りでつわりもごく普通~軽く、さらにエコーでもあまり胞状奇胎の粒状の影が見えない…ということもあります。この場合には通常の切迫流産との区別が難しくなることもありますので、さらに詳しく調べる必要があります。

胞状奇胎の診断について

胞状奇胎は、まずエコー検査でわかることが多いと言われています。妊娠がわかると、まず産婦人科を受診して無事に妊娠しているかどうかを調べますよね。このとき、すでにぶどう状になった絨毛が見えることが多く、すぐに胞状奇胎だと診断されることもあります。ただし、部分胞状奇胎の場合には赤ちゃんの部分も認められますから、エコーの角度などによってすぐに診断することが難しいこともあります。血液検査でhCGの数値が異常に高いことでも胞状奇胎の疑いとなります。赤ちゃんの心拍が確認される妊娠7~9週ごろ、心拍が確認されたあとで胞状奇胎とわかることもあります。

また、胞状奇胎はものすごいスピードでぶどう状の絨毛成分が増えていくので、通常の妊娠よりもかなり早くおなかが出るとも言われています。ですから、そのぶん子宮も通常の妊娠よりも大きくなるので、その点でも胞状奇胎と疑われることがあります。

胞状奇胎の治療方法、病気の進行、その後って?

胞状奇胎と診断されたら、まずぶどう状の子宮内容物をかきだす「子宮内容除去術」をおこないます。掻爬(そうは)ともいいます。膣から器具をいれ、子宮の中身をかき出すという手術になります。この手術は取り残しがないように2回にわけておこわれます。

手術が成功してきちんと内容物を取り出していれば徐々にhCGの量が減っていくので、妊娠していないときのレベルにまでhCGが低下すればOKということになります。ただ、hCGがなかなか下がらないという場合や、いったん数値が下がったにも関わらずまた上昇してしまった…という場合には、胞状奇胎からさらに別の病気が発生したと考えられます。

考えられる別の病気

侵入奇胎

胞状奇胎は絨毛部分が異常に増えてしまうものですが、奇胎が子宮内膜や子宮の筋肉層にまで根深く進行してしまうことがあります。これを「侵入奇胎」といいます。胞状奇胎では内容物を取り除く手術を行うことができても、このように子宮内膜や子宮筋層に根付いてしまった部分は取り除くことができません。つまり、侵入奇胎の場合には子宮の摘出手術・抗がん剤を使っての治療となります。

絨毛がん

文字通り、絨毛から発生する悪性腫瘍です。絨毛がんは胞状奇胎のように妊娠がきっかけで起こるものがほとんどで、そのうちの約半分が胞状奇胎から癌化したものだと言われています。

がんが発生した部分は奥深くまで根付いていく浸潤性が高く、さらにがん細胞がリンパや血液に乗りやすいという特徴を持っています。ですから血液に乗って転移しやすく、もっとも多いのは肺への転移が多いと言われています。胞状奇胎がおこるうち、約15~20%についてはまわりの部分に広がってしまい、さらにそのうち約2~3%については絨毛がんとなりさらに体に広がります。絨毛がんについての詳しい記事はこちら

こういったリスクがとても高いことから、部分胞状奇胎で赤ちゃん部分が正常に育っていたとしても、ほぼ妊娠中絶手術(子宮内容物除去術)をすることになります。もう妊娠を希望していないという方の場合には胞状奇胎を子宮ごと摘出してしまうという「子宮前摘出手術」という手術もあります。

胞状奇胎の予防法とは?

残念ながら胞状奇胎を予防する方法は今のところありません。胞状奇胎の治療が終わったら、管理・経過観察をし、次の妊娠が可能になります。次の妊娠で再度胞状奇胎になる可能性は、極めて低いといわれています。再発を繰り返すような病気ではないという事です。

どんな方でも起こる可能性がある胞状奇胎。繰り返し起こる可能性はきわめて低い(胞状奇胎経験者の約1%)ですが、大切な赤ちゃんのことですから心配になると思います。また、手術は器具で子宮の中身をかき出すというものですから、子宮に傷がついてしまうことでその後妊娠するのが難しいことも…。

ですが、一度胞状奇胎になったからといって次の妊娠時に流産や合併症、先天性異常などリスクが高くなるということはないと言われています。もちろん手術が問題なく終わり、hCG数値がしっかりと下がって「もう大丈夫」と判断されれば、その後にまた妊娠することも可能ですよ。次の妊娠の許可がおりるのは症状やhCG数値などの予後によりますが、約半年~1年は妊娠を避けるように言われますのでしっかり体を休めるようにしてくださいね。

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