妊娠中・産後の両方で気をつけたい血栓塞栓症について

妊娠中・産後の両方で気をつけたい血栓塞栓症について

血栓塞栓症

女性は妊娠すると、いつもとは違った不調を感じるようになったり、さらにさまざまな疾患になりやすいリスクを背負ってしまうことがあります。

赤ちゃんにしっかりと栄養を届けるために血流の量が多くなるので、貧血になりやすい。食べるものの糖分などによっては、血流が悪くなってしまうため赤ちゃんに栄養が行きわたりにくくなる、妊娠糖尿病などになりやすい…などがあります。

そして、「血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)」というとても恐ろしい病気になりやすくなるとも言われているんです。

この血栓塞栓症は産後、特に帝王切開で出産した場合に起こってしまう確率がぐんと上がると言われています。ですが、産前である妊娠中にも起こってしまうことがあるんです。

では、血栓塞栓症というのは具体的にどんな症状があらわれるのでしょうか、また無事に出産をするためにどのように対策をしていけば良いのでしょうか?

血栓塞栓症(けっせんそくせんしょう)って?

血栓塞栓症、これはさまざまな原因で血管の中に血の塊ができてしまい、詰まってさまざまな症状を引き起こしてしまうものです。高齢者などに多いようなイメージがあるかもしれませんが、意外にも妊婦さんも大きくかかわっている病気なんです。というのも、妊娠すると妊娠していないときに比べて血栓塞栓症が起こりやすくなると言われています。

これは、血流が増えるために体のすみずみを周りきるのに時間がかかること、大きくなっていくおなか(子宮)が下半身を圧迫してしまうということなどが挙げられます。

「エコノミークラス症候群」をご存知でしょうか?長時間、ずっと飛行機の狭い座席に座っていると、体の中に血栓ができやすくなってしまいます。私たち人間というのは、普段は歩くことで心臓から送られてきた血液をポンプのように押し返していき、ぐるっと循環させています。でも、長時間このポンプ機能が使えなくなったらどうでしょうか?血液の流れはスムーズにいかなくなってしまいますから、固まりやすくなるため血栓ができるという状況になってしまうんです。このエコノミークラス症候群と同じように、なんらかの原因で血栓ができやすくなってしまうのが、妊娠中・出産後の血栓塞栓症です。

血栓塞栓症になってしまう原因って?

血栓塞栓症ができてしまう原因はほかにもあります。先ほどは帝王切開での出産で血栓ができる確率はぐんと上がる…と言いました。これは、帝王切開をすることで長時間寝たきりになってしまうこと・帝王切開の傷口がふさがる際に血液の塊ができやすいことなどが挙げられます。

もし血栓ができたまま、産後の歩行訓練を開始したときにそのはずみで血栓が肺に飛んでしまったり、血管を詰まらせてしまったら…。呼吸困難や激しい痛みなどに襲われて、最悪の場合は死亡してしまうということも考えられます。

「血栓が肺に飛ぶ」という言葉を耳にする事があると思いますが、血栓が肺に飛ぶと、どう危険なのかを少し説明しておきたいと思います。

血栓が静脈を通り、肺にたどり着いたことを多くの人が分かりやすい表現として「血栓が肺に飛ぶ」と言っていますが、正式な名称は「肺血栓塞栓症(または静脈血栓塞栓症)」といいます。肺内部の毛細血管では、酸素と二酸化炭素を交換する働きを持っています。

その為、肺内部の毛細血管が血栓によって詰まってしまう事で、酸素と二酸化炭素の交換が上手く出来なくなってしまい呼吸困難になってしまう可能性があります。最悪の場合は亡くなってしまう事もある怖い病気です。

実際、妊婦さん・出産後のお母さんの死亡原因の第一位はこの血栓によるものです。多くが帝王切開後に起こると言われていますが、妊娠しているときにも起こることがありますから注意したいものですね。

妊娠のときに血栓ができてしまう理由は先ほども述べましたが、それ以外にもひどい「つわり」も原因のひとつだと言われているんですよ。つわりの種類に関する記事はこちらつわりを楽にする方法の記事はこちら

つわりの程度は人それぞれですが、中には水分さえも摂ることができないというひどいつわりの方がいらっしゃいます。多少ごはんが食べられなくても、この時期を乗り切れば赤ちゃんはじゅうぶんに成長していくことはできます。が、水分を摂ることができないというのは、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても致命的なこと。体の中が水分不足になることで血流が悪くなりますから、血栓ができやすくなるということなんですね。

帝王切開では血栓塞栓症のリスクが増える!?

帝王切開で出産をした方というのは、血栓ができないようにさまざまな対策がとられるようになっています。

たとえば、寝たきりでも血液が固まらないように足にマッサージ機を装着します。風船で足を挟まれているようなイメージで、自動で足のマッサージをしてくれるというものです。

血栓は特に足(下半身)にできやすいと言われていて、歩行訓練を開始したときに足のポンプ機能によって一気に肺のほうまで飛ばされてしまいます。ですから、横になっている間はこのような器具をつけて、血栓ができないように予防していくというわけなんです。

また、血栓予防のために歩行訓練を開始するのもとっても早いんです。ちょっとスパルタのように思えますが、できるだけ産後24時間以内に歩く練習を始めるのが良いと言われています。傷の痛みと戦わなくてはなりませんが、血栓ができないようにするためには水分を摂ること以外に、歩くのがもっとも良い予防策なんです。

そして、万が一妊娠中に血栓塞栓症になってしまったら、どうすれば良いのでしょうか?

血栓塞栓症の治療法って?

血栓塞栓症=死亡してしまう…ということではありません。血栓の大きさや詰まってしまっている場所など、その程度によって治療方法が変わってくるからです。血液をサラサラにする(抗凝固薬)ヘパリンを注射したり、ワルファリンを投与して血液の塊をなくしていきます。

しかし、血栓がとても大きなものであれば手術ということもあります。血栓というとワインのコルクのような、ちょっとしたつまりをイメージするかもしれませんが、ひどい場合には血管そのものの形となって固まった血栓が摘出されることも。これだけの大きな血栓があったら、体にも何らかの影響があってもおかしくありませんよね。

妊娠中に薬を投与される…というのは抵抗があるかもしれませんが、抗凝固薬のヘパリンはおなかの赤ちゃんに影響がないと言われています。ヘパリンの成分は、胎盤を通り抜けられないためです。

ちなみに、妊婦さんにときどきみられる「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」と血栓塞栓症とは、関係がありません。どちらも血管が詰まっているんだから同じじゃないの?と思いますが、下肢静脈瘤は血管に血栓が詰まるのではなく、血管自体がコブになってしまう病気のことです。

つまり、血栓塞栓症のように肺に血栓が飛んでしまうということはなく、命に危険があるというわけではないのです。下肢静脈瘤に関する詳しい記事はこちら

血栓塞栓症を予防するには?

まず、血栓塞栓症を防ぐためにも、妊娠中から予防を心がけておきましょう。

特に肥満・高齢の方はリスクがより高くなってしまいますから、できるだけ歩いて体をうごかすこと。もしおなかの張りがあってなかなか運動ができないということであれば、足のむくみを解消する着圧ソックスを履くなどの対策ができます。

また、逆におなかや下半身を締め付けないような衣服で過ごすように気を付けるのも、ひとつの対策になります。

おなかが大きくなってくると、下半身を中心に体のあちこちが圧迫されますから、血栓ができやすくなります。ゆったりと締め付けのない衣服で過ごすようにする、またできるだけ運動をして筋肉を動かすようにすることで、血液を循環させるポンプ機能をしっかりと働かせることができます。

そして、こまめに水分を摂るようにしましょう。恐ろしい病気ではありますが、予防することはじゅうぶんに可能です。血栓塞栓症は妊娠中はもちろん、出産後も気を抜けないものではありますが、予防も治療もしていくことができますので知っておいてくださいね。

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