妊娠後期は脳卒中に注意しよう!

妊娠後期のトラブル、ごくまれに起こる脳卒中

妊娠後期の脳卒中

赤ちゃんをおなかに宿している妊娠中は、たくさんのトラブルや危険リスクが高まりやすいもの。妊娠する前はなんてことなかったのに一気に貧血になってしまったり、体力が落ちたと感じやすかったりなど、ママの体はものすごく変化しています。妊娠初期にはつわりや不正出血が起こりやすく「赤ちゃんは無事に育っているのだろうか?」「心拍(心臓)はちゃんと確認できるのだろうか?」とヒヤヒヤすることが。つわりについてはこちら心拍が確認される時期妊娠7週目

妊娠中期はつらかったつわりがやっと落ち着き、安定期と呼ばれる時期に入ります。しかし油断はできず、いつ不正出血があったり、おなかの強い張りがあったりするかはわかりませんし、ママは貧血や体調不良を起こしやすくなります。安定期に突入する妊娠5か月ごろの赤ちゃんやママの様子

そして、お産が近づいてくる妊娠後期。ここまでくると、我が子に会えるまでもう少し!とワクワクするものですが、やっぱり注意すべきことがあります。先ほどのように貧血や体調不良、おなかの張りはもちろんなのですが、もうひとつ「脳卒中」に注意しておきたいということなんです。妊婦が脳卒中!?とびっくりしてしまうかもしれませんが、確率としては低いものの、妊娠中に脳卒中が起こることはあります。これはなぜなのでしょうか?

脳卒中ってなに?どんな病気なの?

そもそも、脳卒中というのはどういった病気なのでしょうか。実は「脳卒中」というのは病気の名前ではなく、私たちが一般的にそう呼んでいるだけなんです。この言葉に使われている卒というのは卒倒するということで、その意味は突然意識を失って倒れてしまう…ということです。中は中毒の「毒に当たった」という意味をもっています。脳の血管になんらかの障害が起きてしまい、特に急激に症状が発症してしまうものを脳卒中と呼びます。脳卒中と呼ばれる脳の血管障害には、大きく分けて3種類があります。

脳梗塞(のうこうそく)
脳軟化症とも呼ばれる脳梗塞。脳に栄養を届ける動脈が詰まってしまったり、狭くなってしまうことで、脳が酸素不足・栄養不足になることで起こります。栄養も酸素も届けられない脳は壊死してしまったり、壊死とまでいかなくてもうまく機能しなくなってしまいます。症状としてはめまい、体のしびれ、体の左側・右側どちらかの麻痺、言葉が出てこないなどが代表的です。原因は喫煙や糖尿病、高血圧といった生活習慣によるものが大きいと言われています。
くも膜下出血
私たちの脳を覆っている膜は、実は3層構造になっています。
脳卒中

このうち2層目をくも膜、3層目を軟膜といいますが、この間は弱アルカリ性の脳脊髄液(のうせきずいえき)という無色透明の液体で満たされています。この部分に出血が起こることで、脳脊髄液に血液が混じってしまうのがくも膜下出血です。ほとんどが脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)が破裂してしまうことで起きると言われています。これは、脳の動脈に血の溜まったこぶのようなものができてしまうことです。脳動脈瘤は膜が薄いために破裂しやすく、しかも多くがくも膜下の隙間に存在しているため、くも膜下出血の最大の原因とされています。頭痛や嘔吐をはじめ、脳動脈瘤が破裂したところによってさまざまな症状があらわれます。ひどい場合には昏睡状態、死亡してしまうまでの時間が短いということも。

脳出血
頭蓋骨の中で起こった出血をまとめて脳出血と呼びます。くも膜下出血も脳出血のひとつにはなりますが、脳出血というと「脳内出血」のことを指すのが一般的です。脳内出血は、冬に高齢者が温かい場所から寒いところに移動したとき、血管の収縮が原因で出血してしまう、喫煙やアルコール、肥満や高血圧といったさまざまな原因で起こります。死亡率が高く、どこから出血したかによって症状が違ってきます。「高血圧性脳内出血」と「非高血圧性脳内出血」のふたつに分けることができ、先ほど述べたような原因の脳内出血は前者になります。後者の非高血圧性脳内出血は、最近ニュースでも話題となった歌手・徳永英明さんが患った「もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症)」などの合併症として起こることがあります。

妊娠後期に気を付けたい「妊娠高血圧症候群」

では、なぜこの脳卒中が妊娠後期に起こるのでしょうか?妊婦さんが出産をするなかで、大きなリスクとなってしまうのがズバリ「高血圧」です。以前「妊娠中毒症」と呼ばれていたのですが、現在は「妊娠高血圧症候群」と呼ばれています。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)について

妊娠高血圧症候群ですが、日本産科婦人科学会ではこのように定義されています。

  • 妊娠20週以降・分娩後12週まで高血圧がみられる場合
  • 高血圧に尿蛋白(にょうたんぱく)を伴う場合

このどちらかいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠によって起こったものではないもの。たとえば高血圧がなく尿蛋白があるのみは「妊娠尿蛋白」と言ったり、以前の妊娠中毒症ではとても重要視されていたむくみも、現在では「妊娠浮腫」と言います。妊娠尿蛋白について妊娠浮腫について

妊娠20週以降…とありますが、多くのママは妊娠32週以降、つまり妊娠後期に発症することが多いと言われています。高齢出産や肥満、遺伝などさまざまな原因があると言われていますが、なぜ起こってしまうのかということは詳しくわかっていません。妊娠中に血圧が上がってしまうことはとても危険なため、妊娠中毒症よりもわかりやすい「妊娠高血圧症候群」という名前がついたと言われています。

そもそも高血圧ってどういうことなの?

血圧が高い=健康に良くないということは多くの方がご存知のことですし、また脳の血管が切れやすくなるといったイメージがあるかと思います。では血圧が高くなるということは、具体的にどんなことが起こるのでしょうか?

そもそも血圧というのは血管の中を流れる血液が、その血管にあたえる力のことをいいます。心臓の力強いポンプによって血液は全身に押し出されていきますが、血液が猛スピードで全身をめぐるパワーを考えると、血液が流れるときに血管の壁に相当な圧力がかかるということはわかりますよね。スポンジを想像していただくとわかりやすいのですが、スポンジ(心臓)をギュッと収縮させると、スポンジが含んでいる水(血液)は一気に外に出ていきますよね。このスポンジが収縮したときの水圧が「最高血圧」で、逆にふたたびスポンジが水を吸い込んで大きくなるときの圧力が「最低血圧」というわけです。

高血圧というのは、最高血圧が140・最低血圧が90以上という数値がキープされた状態です。高血圧がずっと続いてしまうと、血液の強い圧力のために血管の壁に負担がかかってしまいます。血管の内側が傷ついたりすると、それを治そうとするうちにアテローム(粥腫:じゅくしゅ)というものが血管の中にできてしまいます。アテロームは細胞の死骸や死亡でできたかたまりで、これが詰まってしまうと動脈硬化の原因となってしまいます。

そして、高血圧は脳卒中の最大の原因とも言われているほど、脳卒中のリスクを高めてしまいます。先ほどご紹介した脳出血と脳梗塞は高血圧と関係が大きいと言われていて、特に脳梗塞については患者が増えているとも言われています。高血圧が長く続く妊娠高血圧症候群は妊娠後期に起こりやすいので、それだけ脳卒中のリスクが高まってしまう…というわけなんですね。

妊婦さんの脳卒中、もうひとつの原因

妊娠中の脳卒中にかかわって、もうひとつ…。脳卒中の中でも、特に脳梗塞が起こるにはさまざまな原因がありますが、若い人や妊婦さんにみられる脳梗塞の原因が「抗リン脂質抗体症候群」というものです。血管に炎症を起こしてしまう自己免疫疾患をまとめて血管炎ともいいますが、その中でも流産を繰り返す女性に多いのがこの抗リン脂質抗体症候群です。抗リン脂質抗体症候群を含む複数回の流産の原因についてはこちら

おなかの中の赤ちゃんとお母さんは、血液を介して栄養や酸素を受け取っています。へその緒の根元である胎盤には、この血液が固まらずスムーズに栄養を受け渡しできるようにするための「リン脂質」という成分が存在しています。ですが、お母さんの体にリン脂質の抗体がある場合、血液が固まり、赤ちゃんに栄養や酸素がうまく届かなくなってしまいます。その結果、赤ちゃんの成長が遅れてしまったり、おなかの中でいつのまにか亡くなってしまっていることも…。

お母さんがこの抗リン脂質抗体症候群になっている場合、流産のリスク以外にも脳卒中のリスクが高まります。血液が固まりやすくなってしまうため、複数の妊娠で繰り返しこの症状が起こってしまうとそれだけ血栓(血のかたまり)ができてしまう可能性が高くなります。血液は全身を巡っていますから、血栓ができると全身のあちこちにまわってしまうことも考えられますし、特に脳の血管は細く詰まりやすいので脳卒中が起きやすいと言われています。

脳卒中の原因にもなりかねない妊娠高血圧症候群を防ぐには?

妊娠後期に起きる可能性のある脳卒中ですが、これを防ぐためにはまず妊娠高血圧症候群にならないようにすることです。妊娠高血圧症候群が起こる原因はさまざまですが、早期に起こるものは赤ちゃんとママをつなぐ胎盤に原因があり、遅く起こるものはママ側に原因があることが多いと言われています。特に妊娠34週未満、早くに妊娠高血圧症候群が起こるほど重症化しやすいと言われていて、さまざまな処置がとられます。

ママ側の要因としては以下のような内容です。こちらを参考にして、妊娠高血圧症候群を避けられるようにリスクをなくしていきましょう。

  • 年齢:20歳未満、40歳以上
  • 肥満:BMI25以上
  • 既往歴:高血圧、糖尿病、以前の妊娠での妊娠高血圧症候群、甲状腺機能低下症など
  • 遺伝:妊娠高血圧症候群や高血圧の方がいる場合リスクが高まる
  • 出産回数:初産婦
  • その他:双胎妊娠、胞状奇胎

妊娠中の体重管理(BMI自動計算)甲状腺機能低下症についてははこちら多胎妊娠についてはこちら胞状奇胎についてはこちら

また、妊娠高血圧症候群を発症してしまった場合には、妊娠週数や症状の度合いによってすぐに出産させる、安静、食事療法、血圧を下げる降圧剤をつかうなどの処置がなされます。最後まで安心して元気な赤ちゃんを産むためにも、そしてママの脳卒中を防ぐためにも妊娠後期は高血圧に注意をしておきましょう。

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