てんかんの持病を持つ女性の妊娠と出産について

てんかんの持病を持つ女性の妊娠と出産について

てんかん

「てんかん」という病気をご存知でしょうか。最近、てんかんの持病を持っている人が発作を起こしたことで交通事故につながった…というニュースを見かけるようになりましたよね。このてんかんはよく聞くものではありますが、実際のところどういった病気で、どんな症状があらわれるのかを詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。では、てんかんはどういったものなのでしょう。

てんかん(癲癇)は、大脳が引き起こす病気です。私たちの脳というのは、絶えずいろいろな指令を体に伝えるべくせっせと働いていますよね。この指令はニューロンという、情報を伝える役割のある神経細胞があちこちへと伝えていきます。指令の伝わり方なのですが、まるで電気が水を伝っていくようにニューロンを電気信号が通り抜けていきます。

そのとき、なんらかの原因でニューロンから異常な電気が発射されてしまうことで、体に予期せぬ発作や反応が起こります。これが、てんかんの発作です。いわば、てんかんは脳の中で電気信号がショートしてしまい、一時的に体が停電して機能停止(意識を失うなどの発作)してしまうということなんですね。

てんかんの種類は30にもなると言われていて、人によってその症状は違います。大脳は脳の大部分を占めていますから、大脳のどの部分でショートが起こったかによっていろいろな症状があらわれてしまいます。全身ががくがくとけいれんする、意識を失ってしまう、突然反応できないほどぼーっとしてしまう、体をびくっとさせてしまうなど、さまざまです。

てんかんは100人に1人!身近な病気だった

てんかんですが、日本では約100人に1人、およそ100万人の患者さんがいるといいます。意外にも身近な病気のてんかんですが、患者さんにとっては突然意識を失ってしまったり発作が起こってしまったりと、とても怖い病気なのです。また、薬を飲めば発作を抑えられるものが大半ですが、中には薬を飲んでも発作をおさえられない・コントロールすることができないという難治性てんかんもあります。

さて、そんなてんかんを抱えている方は、意外と多いということがわかりました。男性も女性も、また年代もあまり関係なくてんかんを患っている方はいらっしゃるのですが、その中でも女性の「妊娠」を考えたときに、どうなるのでしょうか。妊娠・出産できるのか、てんかんの持病を持っていると赤ちゃんに遺伝しないのか、発作を抑えるための薬は影響しないのか…など、たくさんの不安があると思います。てんかんの持病を持っていても、無事に妊娠・出産できるのでしょうか?

てんかんは赤ちゃんに遺伝するの?影響は?

まず、てんかんを持っていたとしても多くの方が妊娠・出産をしています。出産後に授乳をしながら子育てをしているという方もとても多いですし、いくつかのポイントに気を付けておけば妊娠・出産することが可能なんです。多くの方が気になるのが「赤ちゃんへの遺伝」でしょう。

てんかんは、遺伝は関係ないということが言われています。妊娠中に発作を抑える抗てんかん薬をたくさん飲んでいたりすることで悪影響を及ぼすことはありますが、てんかんを持っているお母さんから赤ちゃんにてんかんが遺伝するということはないようです。

てんかんの持病を持つ女性がもっとも注意したいのが、先ほど述べた「抗てんかん薬」についてです。てんかんの発作を抑える抗てんかん薬にはいろいろな種類のものがあって、発作の程度やそれぞれの症状によって複数の抗てんかん薬を組み合わせて服用するということも。こうすることで効果的にてんかんの発作を抑えていくことができますが、それだけ強力な抗てんかん薬をたくさん飲んでいることによって、薬の血中濃度が上がってしまいます。赤ちゃんをおなかの中で育てていくためには、きれいで害のない血液が必要です。特に、妊娠初期(12週ごろまで)の赤ちゃんは一気にいろいろな臓器ができあがっていきますから、薬の影響を受けやすい時期でもあります。器官の成長過程についてはこちらをごらんください

抗てんかん薬を飲みながらの妊娠は、赤ちゃんの奇形があらわれやすいと言われています。この奇形というのは、口唇裂(上唇に裂け目ができてしまう)や口蓋裂(上あごが裂けたり穴がぽっかりとあいている)などです。口唇裂に関する詳しい記事はこちらからごらんください

ですから、てんかんの持病があるけど妊娠したい…と考えている方は、「妊娠してから病気の対策をする」のではなく「妊娠する前に病気の対策をする」ことが望まれます。妊娠する前に赤ちゃんに影響の少ない抗てんかん薬に変えていく、薬の量を減らしていく、複数の薬を組み合わせて飲んでいる場合には1種類にできるかを調べる…など、赤ちゃんを迎えるまえにいろいろな準備をしなくてはなりません。

てんかんがある方の妊娠の注意点

ただ、赤ちゃんに影響があるかもしれないから…といって抗てんかん薬を一切服用しない・勝手に減らすというのは、やめておきましょう。

抗てんかん薬は赤ちゃんへの影響が小さいものを使っていけば良いのですが、妊娠中にてんかんの発作が起こってしまったらどうでしょうか。 全身にてんかんの発作が起こってしまうという方の場合、うまく呼吸をすることができずに赤ちゃんも酸素が足りなくなってしまう…ということが考えられます。 けいれんするとおなかがぎゅっと張ってしまったり、失神して倒れたときにおなかをぶつけたり…ということがあるかもしれません。

また、いつどこで発作が起こるかというのはわかりませんから、リスクがとても大きくなってしまうんですね。

ですから、しっかりと主治医と相談して薬の種類を減らす・量を減らす・リスクの低い種類に変えるなどの対策を取っていきましょう。抗てんかん薬には、フェニトイン・プリミドン・ジアゼパム・カルバマゼピンなどなど、たくさんの種類があります。この中でも「パルプロ酸ナトリウム」という種類の抗てんかん薬は、妊娠を考えている方は控えた方が良いとされています。

抗てんかん薬(バルプロ酸)が赤ちゃんに与える影響

2015年11月19日、九州大などの研究班が抗てんかん薬が赤ちゃん(胎児)に与える影響について研究した結果が発表されました。妊娠中に抗てんかん薬を服用すると、生まれる子どものニューロンの生成が低下し、学習や記憶機能に影響を及ぼす可能性があるという事が、マウスを使用しての実験により分かったそうです。ですが、同時に生まれたマウスが自発的に運動することによって、機能が改善されるということも分かっています。

研究の対象となった抗てんかん薬(バルプロ酸)は、てんかんを患っている妊婦さんの約2割(世界)の方が「バルプロ酸」の治療を受けているといいます。妊娠中に「バルプロ酸」を使用していた場合、どのような影響があるのか・・・というと、生まれた子どもの認知機能低下があることが報告されているそうです。

九州大大学院医学研究院の中島欽一教授(神経科学)の研究報告によると・・・妊娠中のマウスに抗てんかん薬(バルプロ酸)を投与しつづけたグループから生まれたマウス10匹と、抗てんかん薬(バルプロ酸)の影響を受けていないグループから生まれたマウス10匹に、迷路を使った学習(記憶)テストをしました。テストを5分間実施して比べたところ、通常のマウスは迷路の正解率が66%。抗てんかん薬(バルプロ酸)の影響を受けているマウスの正解率は50%だったそうです。抗てんかん薬(バルプロ酸)の影響を受けていたマウスは、神経幹細胞の数が少なくニューロンを生成する事が出来ず、ニューロンも少ないうえに形態などの異常が見られたと発表されいています。

ですが、抗てんかん薬(バルプロ酸)の影響を受けていたマウスの小屋に回し車(ホイール)を設置したところ、自ら回し車(ホイール)で運動した結果・・・迷路テストの正解率が66%に回復し、ニューロンの異常もなくなったそうです。

ただ、その方の症状によってはパルプロ酸でなくてはならない!ということもあるでしょう。そういったときには、量を調節していきます。血中濃度・投与量には望ましいとされるラインがありますので、パルプロ酸でなくてはならないという方は医師と相談しながら服用していきます。

このように、てんかんの持病があったとしても妊娠・出産し、てんかんの遺伝なく赤ちゃんを育てていくことは十分に可能です。

しかし、それにはここで述べたように注意点もありますから、先生としっかり相談しながら赤ちゃんを育てていきましょう。赤ちゃんがほしいという方は、まず妊娠する前に体つくりをして体調を整え、不安なく赤ちゃんを迎え入れる準備を行っていきましょうね。

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