うつ病をかかえての妊娠

うつ病でも妊娠は可能!注意すべき点は?

うつ病での妊娠

近年増えている病気と言えば、生活習慣病や癌といったものが代表的ですよね。時代が移り変わると食生活や病気の流行もどんどん変わっていくものですが、近年特に多くなっているのが「うつ病」ではないでしょうか。

うつ病といえば、精神的な疾患として知られていますよね。ひどく落ち込んでしまったり自殺願望があらわれてしまったりと、さまざまな症状が出ることで普段の生活に支障が出てしまうというものです。うつ病は薬である程度コントロールすることができ、再発しやすいものの改善して完治させることも可能です。

とはいえ、うつ病は周りの人に理解してもらうことや、薬をしっかり飲んで前向きに治していく!という気持ちが必要です。特に、赤ちゃんが欲しいと思っている女性はできるだけ、うつ病を完治させてから妊娠したいものですが、中にはうつ病を抱えたまま妊娠する方もいらっしゃいます。その場合、赤ちゃんに影響などないのでしょうか?うつ病と妊娠の気になる関係を見ていきましょう。

うつ病って、どんな病気なの?

うつ病というのは、精神疾患である「気分障害」の一種です。この気分障害には次のような種類があります。

  • うつ病性障害
  • 双極性障害
  • 物質誘発性気分障害

それぞれどのような違いがあるのかを見ていきましょう。

うつ病性障害

産後うつや季節性感情障害(うつ病の症状が秋~冬にきて、春には解消する季節的なもの)など、さまざまな分類がなされます。若い女性に多い「非定型うつ病」もこのうつ病性障害のグループに含まれていて、さまざまなストレスや職場での人間関係の悪化などがきっかけで症状が起こります。※非定型うつ病・・・通常のうつ病は何に対してもやる気がおきませんが、非定型うつ病の場合は好きなこと・楽しいことに対しては一転して明るくなる(前向きになる)傾向があります。産後うつについてはこちら

双極性障害

ふさぎこんでしまうようなうつ状態と、テンションが高くエネルギーにあふれた躁(そう)状態が交互にあらわれる障害です。10~20代の方に多く、二卵性の双子の場合は二人ともが双極性障害にかかる確率は低いものの、一卵性の双子では高い確率で二人ともが双極性障害になることがわかっているため、遺伝要因が考えられている気分障害です。

物質誘発性気分障害

アルコールや覚せい剤、ベンゾジアゼピン系の向精神薬を長期的に使っていると、脳に影響を及ぼしたり、躁・うつなどの症状があらわれやすくなります。アルコール依存症となった患者さんの多くは、大うつ病性障害が高確率で起こるとも言われていて、うつ病と大きく関係していると言われています。

うつ病を抱えているけど妊娠を考えているという方、うつ病を抱えたまま妊娠したという方の不安としては「薬が赤ちゃんにどんな影響をおよぼすか?」ということだと思います。

また、妊娠・出産をきっかけに症状が悪化してしまうことも怖いですよね。ただでさえツライ症状が、これ以上悪化してしまったらより強い薬を飲まなくてはならないなど、さまざまな不安が襲い掛かるでしょう。では、うつ病を抱えているという方は赤ちゃんを諦めなくてはならないのでしょうか?

うつ病の治療薬は胎児にどのような影響を与えるの?

うつ病のような精神疾患を抱えているままの妊娠を、旦那さんやご両親に話したときにどんな反応をされるでしょうか?

  • 遺伝するのではないか
  • 諦めなさい
  • 妊娠するべきではない

など、うつ病に理解がない場合には心無い言葉をぶつけられてしまう可能性もありますよね。

結論から言うと、うつ病を抱えたままであっても妊娠・出産することはじゅうぶんに可能です。

しかし、服薬しているということ、症状の重さによっては薬の量もどうしても増えてしまうため、薬による赤ちゃんへの影響などリスクが高まってしまうということなど、さまざまな心配があるのは事実です。ですが、妊娠をきっかけに症状が改善するということも、意外にもよくあることなんです。もっとも気になる「うつ病の治療薬」について、赤ちゃんへの影響も含めて詳しく見ていきましょう。

うつ病に使われる治療薬は、古いものから新しいものまでそれぞれ違ってきます。古いものから順番にご紹介していきますので、参考にしてみてくださいね。

また、赤ちゃんに影響がある可能性を示す「胎児危険度分類」という薬のランクがあるのですが、これはカテゴリーA・B・C・D・Xという順になっています。Aがもっとも安全性が高く、カテゴリーXになると明らかに胎児奇形を発生させるような危険性があるもの、つまり使ってはいけない・禁忌だということになります。次からご紹介する抗うつ薬などの治療薬では、この胎児危険度分類のランクについても記載しておきますので参考にしてくださいね。

胎児危険度分類のランク

この胎児危険度分類のカテゴリーを定めているのはアメリカの「FDA(アメリカ食品医薬品局)」で、日本の厚生労働省にあたる組織です。ただ、このカテゴリーに分類されていないものについては、オーストラリア薬物評価委員会(ADEC)が定めるカテゴリーを記載しています。

三環系抗うつ薬(TCA)

もっとも古い世代の抗うつ薬で、なんと1950年代から使われ始めました。古いとは言え現在も使われ続けていますが、副作用も多い抗うつ薬となっています。

イミプラミン(商品名・イミドール、トフラニール)…カテゴリーD

もっとも最初に作られた三環系抗うつ薬で、起立性低血圧などの副作用も少ない薬となっています。ですが、危険度のランクはDということであまり好ましくない治療薬となっています。(禁忌、妊婦に使ってはいけない!!ということではなく、使用しない方のリスクがどうしても高いという場合には使われることもあります)

アミトリプチリン(商品名・トリプタノール、ラントロン)…カテゴリーD

抗うつ薬としてはもちろん、睡眠導入剤としてよく利用されている薬です。作用が強いために、めまい・便秘・眠気などの副作用があらわれやすい治療薬となっています。

アモキサピン(商品名・アモキサン)…カテゴリーC

うつ病やパニック障害、過食症などの治療に使われる治療薬で、継続して服用をし続けていく必要のある薬です。突然服用をストップすることで重い副作用があらわれる危険性があるので、注意が必要です。

クロミプラニン(商品名・アナフラニール)…カテゴリーC

うつ病やうつの状態に対して処方される薬で、主な副作用として、のどの渇きが起こりやすいと言われています。

四環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬よりも効果があらわれるのが早く、副作用も軽いという特徴を持っている抗うつ薬です。

ミアンセリン(商品名・テトラミド)…FDAのカテゴリー不明(オーストラリア薬物評価委員会では、B2というランクになっています)

よく使われる抗うつ薬ですが、重い副作用として「悪性症候群」に陥ってしまう可能性があります。悪性症候群は寡黙になる(口数が減る)、高熱や意識障害などの症状があらわれます。

マプロチリン(商品名・ルジオミール)…十分なデータが得られていないとして、カテゴリー不明

最初の四環系抗うつ薬として、日本でも30年以上使われている抗うつ薬です。副作用として、24歳以下の患者さんに自殺の思考など危険なリスクが増えるということがわかっているため、慎重に投与されます。

セチプチリン(商品名・テシプール)…FDAもADECのデータでも、胎児危険度は不明とされています

海外で抗うつ薬として使われている(日本では抗パーキンソン病薬)治療薬、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)と一緒に使うのは禁忌だとされています。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

抗うつ薬。幸せホルモンとも呼ばれているセロトニンをうまく吸収するように作用し、うつの症状やうつ病などの不安を取り除く薬となっています。三環系や四環系の抗うつ薬よりも副作用が少なくなっていますが、それまでなかったセロトニン症候群やSSRI離脱症候群(薬の服用をストップすることで起こる症状)など、新たな副作用もあります。

パロキセチン(商品名・パキシル)…カテゴリーD

18歳未満の患者さんには投与してはいけないとされる、抗うつ薬。ラットの実験では、胎盤や胎児に成分が移行してしまうということがわかっていて、うつ病の場合には痩せている人にパキシルが合いやすいと言われています。うつ病やパニック障害をはじめ、強迫性障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの治療に使われています。

フルボキサミン(商品見・デプロメール、ルボックス)…カテゴリーC

24歳未満の患者さんが服用する場合、自殺願望が芽生えてしまう…などの副作用があらわれることも。うつ病やうつの状態になっている方をはじめ、強迫性障害などの治療に使われ、うつ病の場合には太っている人に合っていると言われています。

セルトラリン(商品名・ジェイゾロフト)…カテゴリーC

自殺願望が芽生える可能性があるとともに、他の人に対して攻撃的になる「攻撃性」のリスクがあることがわかっています。また、患者さんの3~4割に吐き気の副作用がみられるため、胃腸薬と一緒に処方されることが多いといいます。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

脳内で幸せホルモンの「セロトニン」と、ストレスホルモンの「ノルアドレナリン」というふたつのホルモンを増加させて、うつを治療していきます。

デュロキセチン(商品名・サインバルタ)…カテゴリーC

うつ病やうつの状態を治療する以外にも、糖尿病性の神経障害や線維筋痛症の痛みを抑えるための劇薬とされています。 日本では、発売後8ヶ月の間に意識を失ってしまうという発作が数例起きていますので、投与には慎重にならなくてはなりません。

ミルナシプラン(商品名・トレドミン)…カテゴリーC

サインバルタに比べると副作用が弱いものの、そのぶん効果も弱い抗うつ薬となっています。なんとなくだるい、意欲がない…といったうつ病に使われています。

ベンラファキシン(商品名・イフェクサー)…カテゴリーC

うつ病、パニック障害などの治療薬として使われていますが、飲み忘れた!というときや服用をストップしたときに、もっとも重い離脱症状があらわれると言われています。また、FDAの胎児危険度分類ではランクがCとされていますが、妊婦さんに対する試験はほとんどなく、流産率を上げる・新生児異常が報告されているとのことです。

トリアゾロピリジン系抗うつ薬(SARI)

トラゾドン(商品名・デジレル)…カテゴリーC

SSRIが登場するまではよく使われていた薬で、うつ病のための抗うつ薬としてはもちろん、副作用として眠気が挙げられることから睡眠導入剤の代わりとしても使われています。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

SSRIやSNRIのように、脳内で使われていないノルアドレナリンやセロトニンを使って濃度を上げるのではなく、ノルアドレナリン・セロトニンの分泌量自体を増やすという働きがあります。

ミルタザピン(商品名・レメロン、リフレックス)…カテゴリーC

早く効果があらわれ、しかも長時間効くという抗うつ薬です。抗うつ薬としてはもちろん、睡眠導入剤の効果を高めるために一緒に処方されることもあります。高い確率で何らかの副作用があらわれるということがわかっています。

その他の治療薬(増補薬)

抗不安薬…ベンゾジアゼピン系の場合にはカテゴリーDもしくはX

バルビツール酸やベンゾジアゼピン薬が主ですが、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は数十種類あり、依存性が高く離脱症状も重くなりやすいことから短期間の服用としています。

抗精神病薬(商品名・ドグマチール、ミラドール、アビリットなど)…カテゴリーは不明

カテゴリーは不明ですが、妊娠中の禁忌や催奇形性の可能性は少ないと言われています。うつ病をはじめ、統合失調症や胃潰瘍などにも使える治療薬となっています。

リチウム塩(商品名・リーマスなど)…カテゴリーD

双極性障害の、気分が高揚したりエネルギーに満ち溢れているような「躁状態」の治療に使われます。治療のために投与されますが、リチウム塩は治療に有効な血液濃度と、中毒になってしまう血液濃度との差が低いため、気を付けて服用しなければあっという間に中毒状態になってしまいます。副作用や過剰摂取による中毒症状としては、下痢・胃の不快感・ふるえ・錯乱やひどい不整脈があります。

うつ病の治療でもっとも必要なことって?

たくさんの種類があるうつ病の治療薬。すべてが妊婦さんには禁忌・服用してはいけないというわけではありませんが、リスクがあるということはやはり覚悟しなくてはなりません。多くの方がうつ病の治療薬を服用しながら妊娠・出産をしているのは事実ですが、万が一赤ちゃんに何かあったときに「あのとき薬を飲まなければ…」と必要以上に自分を責めてしまわないよう、まずは最初に強い意思をもって妊娠に臨みましょう。そのためには、周囲の理解が不可欠です。まずはパートナーである夫に、自分のうつ病について理解してもらうことが大切です。妊娠・出産を経て一緒に子育てをしていく中で、うつ病がどんなふうに影響していくかは誰にもわかりません。万が一うつ病が悪化してしまった場合、夫がしっかり支えてくれるか、子育てや家事などを積極的に協力してくれるか、サポート体制をとってくれるかをしっかりと話し合っておきましょう。

妊娠・出産・育児は、思っている以上にホルモンバランスが崩れてしまって、それまでどんなに体力に自信があって健康だ!という人でも、どうなるかはわかりません。切迫早産、おなかの張り、出血、痛み、入院、つわり、イライラ…本当に、ここには書ききれないほどたくさんのトラブルが待ち構えています。妊娠中に起こりやすいマイナートラブルについてはこちら

うつ病を抱えている方が妊娠をきっかけに、症状が改善することももちろんあります。ただ、すべての人がそうではありませんし、中には薬の影響が怖くて自分で服用をストップしてしまい、結果的に悪化してしまった…というケースも少なくありません。

ですから、夫や両親、職場の方の理解を求めるとともにもうひとつ大切なのは「しっかりと薬を飲む」ことです。赤ちゃんへの影響は!?と驚くかもしれませんが、うつ病が悪化してしまう理由のひとつとして薬を飲まなくなる・飲み忘れがあるということが挙げられます。うつ病が悪化してしまった場合、正直なところ赤ちゃんどころではなくなってしまうということもあります。赤ちゃんはママの体調が悪くてもおかまいなしに泣き、抱っこやおっぱいを求めてきます。それが昼夜問わず、なかなか眠れない日々を過ごすママも少なくありません。そんな生活をして、ただでさえうつ病で体がつらいというとき、育児をしていくことができるでしょうか…?ですから、ママの為という事はもちろん・・・生まれてくる赤ちゃんのためにも、まずは妊娠中でもしっかりと自分に合った抗うつ薬を服用し、赤ちゃんが産まれるまでに完治させる!という意気込みで治療に臨みましょう。心療内科や精神科、そしてかかりつけの産婦人科の先生にしっかりと相談し、赤ちゃんに影響の少ない薬を処方してもらうなど対策を考えてもらうようにしましょう。

抗うつ薬以外にも気を付けたいもの

先ほどご紹介した抗うつ剤を始め、他にも抗てんかん薬や鎮静剤の一部、気管支拡張薬(テオフィリン)や、アルコール・カフェインといった嗜好品は、稀に「新生児薬物離脱症候群」を起こす可能性があります。これは、お母さんがアルコールや抗うつ剤を服用していたことで胎盤を通じて赤ちゃんに作用し、産まれてきた赤ちゃんの体から薬物(物質)が排出されるときに様々な症状が起こることをいいます。症状としては、けいれんや一時的な無呼吸、手足の震えなどが起こります。かかりつけの心療内科と産婦人科で連携してもらい、適切な薬を処方してもらうようにしましょう。事前に産婦人科の医師に抗うつ剤を服用しているということを伝えておくと、万が一「新生児薬物離脱症候群」が起こってしまった場合にも、適切な処置を素早く行ってもらうことができます。生まれたあとの赤ちゃんにこの症状が起こらないよう、チェックしてもらうことができますので、それぞれの医師にしっかりと伝えておくと良いでしょう。

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