望めばいつでも子どもを授かれると思っていたはずが、いざ妊活をはじめてもなかなか妊娠しないということがあります。
そうなると不妊治療を開始するケースが多いのですが、不妊治療をおこなってから、子どもを産むまでにかかるお金は意外と高く、経済的な負担は大きいものです。
そこで誕生したのが、不妊治療をカバーする民間の保険です。
赤ちゃんが欲しい方は、はたして、保険に加入しておくべきなのでしょうか?
気になる保険の保障範囲や加入条件、注意すべき点、活用例などについてご紹介します。
不妊治療保険を検討している人は、参考にしてください。
不妊治療とは?
子供を希望する夫婦やカップルが、避妊をせずに性生活をおこなってから1年たっても妊娠しなければ、不妊症と診断されます。
不妊治療とは、不妊症の夫婦やカップルのために、医師の診断をもとに
- 「妊娠しない原因の治療」と
- 「妊娠の可能性を高める治療」
を2本立てで行う治療です。
一般的には、排卵前後に性交をするタイミング法からはじまり、徐々に高度生殖補助医療技術を使う方法へと、ステップアップしていきます。
タイミング法であれば、健康保険が適用される場合が多く、費用は3割の自己負担額のみなので比較的安くすみますが、ほかの方法になると費用は高額です。
治療法 | 健康保険適用 | 費用 |
---|---|---|
タイミング法 | 適用 | 数千円/1回 |
人工授精 | 適用外 | 15,000円程度/1回 |
体外授精 | 適用外 | 20~50万円/1回 |
顕微授精 | 適用外 | 40~60万円/1回 |
一般的には、タイミング法を半年~1年おこなって妊娠しなければ、次の段階の人工授精に移ります。
人工授精を5~6回おこなっても妊娠しなければ、さらに次の段階の体外授精へと、順次移っていきます。
ただし、不妊の原因や女性の年齢によって、治療法は最初から顕微授精になることもあり、段階的に進まない場合があるのです。
不妊治療の保険がある?ニッセイのシュシュ
不妊治療のなかでも、体外授精と顕微授精は特定不妊治療とよばれ、卵巣から卵子を採卵するという高度な医療技術が必要であり、負担する医療費も高額です。
高額な特定不妊治療にかかる費用を支援するために、2016年に日本生命が不妊治療でも給付金がでる保険を日本で初めて販売しました。
「ニッセイ 出産サポート給付金付3大疾病保障保険 ChouChou!(シュシュ)」という保険は、基本的に3大疾病(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)の保険ですが、特定不妊治療・出産給付金、・死亡の保障がついています。
なによりも、不妊治療中は保険に加入できないケースが多いのですが、シュシュは不妊治療中でも加入できるのがポイントです。
シュシュは誰でも加入できるの?
不妊治療中でも加入できる保険ですが、加入できるのは16~40歳の女性のみです。
-
- 加入対象者
女性
-
- 加入対象年齢
16~40歳
-
- 保険期間
10年・15年・20年
-
- 契約年齢範囲
保険期間10年:16~40歳
保険期間15年:16~35歳
保険期間20年:16~30歳
保険期間は10年・15年・20年から選ぶので、一生涯の保障ではありません。
一般的に「病気治療中」の場合は保険に入れないケースが多いため、不妊治療も「治療中」とみなされてしまい、保険加入は難しくなります。
しかし、シュシュは保険治療中でも加入できるのです。
加入時の告知は正直におこないましょう。
シュシュでお金を受け取れるのはどんなとき?
シュシュに加入したら、どんなときにお金を受け取れるのでしょうか。
特定不妊治療をしたとき
自分が妊娠したくて特定不妊治療(人工授精・体外受精・顕微授精など)を受けたら、6回までは1回につき5万円、7~12回までは1回に10万円を受け取れます。
【特定不妊治療を受けたとき】
- 1~6回目:1回につき5万円
- 7~12回目:1回につき10万円
- 最大12回まで受け取れます。
顕微授精の平均金額は40~60万円といわれており、国からの助成金を15万円もらっても足りないのが現状です。
そんなときに、給付金を受け取れるのはうれしいですね。
とはいえ、特定不妊治療の給付金を受け取れるのは、加入してから2年以上経過してからで、日本国内で施術したときになります。
海外で不妊治療を受けたり、加入して数か月以内などでは、給付金を受け取れません。
また、体外受精や顕微授精をせずに、卵子を凍結させることが目的だったり、ほかの人に卵子を提供する目的の場合は、給付金は支払われないのです。
あくまでも、自分が妊娠を希望したときの施術が対象になります。
出産祝い金がある
出産したときにも、お祝い金を受け取れます。
【出産したとき】
- ひとり目:10万円
- 2人目:30万円
- 3人目:50万円
- 4人目:70万円
- 5人目以降:1回につき100万円
うれしいポイントは、双子や三つ子のような多胎妊娠の場合は、それぞれの赤ちゃんひとりにつき1回の出産として支払われるのです。
つまり双子だと、10万円+30万円になり、40万円を受け取れます。
三つ子だと、合計90万円を受け取れるということになるのです。
もちろん、加入期間中に弟や妹が生まれた場合も、その都度支払われます。
ただし、加入してから1年以内は、出産祝い金を受け取れません。
流産や死産のケースも、給付金は支払われず、赤ちゃんが生きて産まれてきた場合のみに受け取れます。
がん・心筋梗塞・脳卒中になったとき
がん・心筋梗塞・脳卒中(三大疾病)になったときは300万円が、上皮内がん(上皮内新生物)と診断されたら、30万円が給付されます。
上皮内がんは、がんでいうステージ0の状態です。
放置すればがん化する可能性がありますが、きちんと治療をすることで3年生存率はほぼ100%といわれている、いわば初期のがんをいいます。
万が一、亡くなったときにも、300万円が給付されるので、死亡保障もしっかりついている保険です。
ただし、がん・心筋梗塞・脳卒中や死亡などで300万円を受け取ったら、契約は消滅し、保障はなくなります。
また、がんは加入してから90日、心筋梗塞・脳卒中は60日以上経過しないと、給付金を受け取れません。
満期金がある
シュシュは期間の決まった保険なので、期間が満了すれば、満期一時金を受け取れます。
満期金の金額は、保険期間によって異なります。
-
- 10年
100万円+(5,000円×給付支払金)-給付金合計額
-
- 15年
150万円+(5,000円×給付支払金)-給付金合計額
-
- 20年
200万円+(5,000円×給付支払金)-給付金合計額
もしも、期間が満了するまでに受け取った給付金額が、上記の計算で多かった場合は、満期一時金を受け取れません。
シュシュの保険料は月々1万円前後
シュシュは数ある保険のなかでは、年齢差による保険料の違いは、あまりない保険といえます。
契約時の年齢が25歳と40歳での差額は、たった1,000円程度。
保険料は1万円前後です。
契約年齢 | 保険期間10年 | 保険期間15年 | 保険期間20年 |
---|---|---|---|
25歳 | 9,825円 | 9,972円 | 10,086円 |
30歳 | 10,128円 | 10,227円 | 10,233円 |
40歳 | 10,869円 | - | - |
※2017年8月現在
ちなみに、40歳で契約すると、選べる保険期間は10年のみです。
シュシュの注意点
シュシュはさまざまなシーンでお金を受け取れて、なおかつ満期金まであるので魅力的ですが、注意点がいくつかあります。
不担保期間がある
保険用語でいう「責任開始日」から、ある一定の期間は、不担保期間になります。
つまり、保険に加入しても最初のうちは、給付金を受け取れない期間があるということです。
シュシュを使って不妊治療に役立てようと考えるなら、不妊治療を開始する2年以上前に加入する必要があります。
また加入しても、出産は1年間、がんは90日、脳卒中・心筋梗塞は60日以上経過しないと、給付金を受け取れないので、加入を考えている方は、なるべく早いうちに加入したほうがよいでしょう。
支払総額より満期一時金は減る
もしも、シュシュを保障目的ではなく、貯蓄を目的にするなら、やめたほうがよいでしょう。
特定不妊治療給付金や出産給付金を受け取った場合は、満期一時金から差し引かれます。
給付金を受け取らなくても、満期一時金は、払込保険料の合計額を下回るので、貯金には向いていません。
あくまでも、三大疾病や出産・不妊治療にまつわる保障を考えておきましょう。
加入できるのは40歳まで、保障は一生ではない
40歳までしか加入できないのと、保障期間が決まっていることを、デメリットとして考える方もいます。
一生涯の保障ではないので、三大疾病を手厚くしたい方などは、注意しましょう。
シュシュ不妊治療保険は損?お得?
25歳女性が、保険期間20年で加入をした場合は、損をするのでしょうか。
それとも得をするのでしょうか。
まずは、支払総額を計算します。
【支払総額】
25歳で契約し、保険期間が20年なので
- 10,086円 ×12か月×20年=2,420,640円
なにも給付を受けなかった場合
【なにも給付を受けなかった場合の満期一時金】
- 2,000,000円(満期一時金)-2,420,640円(支払総額)=-420,640円
約42万円のマイナスですが、保険なので、プラスになることは基本的にないでしょう。
体外受精を5回して1人を出産した場合
【体外授精を5回受けて、1人を出産した場合の給付金】
- 5万円(特定不妊治療給付金)×5回+出産給付金10万円(1回)=35万円
35万円の給付金を受け取れます。
【体外授精を5回受けて、1人を出産した場合の満期一時金】
200万円+(5,000円×給付金支払回数)-給付金支払合計額なので、
- 200万円+(5,000円×6回)-35万円=1,680,000円
【保険会社から受け取る合計額は?】
- 1,680,000円(満期一時金)+35万円(給付金)=2,030,000円
【20年支払って損?得?】
- 2,030,000円(もらえる総額)-2,420,640円(20年間の保険料)=-390,640円
不妊治療の保障を受けても、マイナスです。
支払った総額より受け取る金額は安い?多い?
20年間支払った支払い総額よりも、受け取る金額が高くなるのは、三大疾病にかかったときや死亡給付金を受け取った場合、また子どもを5人以上出産したケースなどです。
給付金を受け取るタイミングが多くなれば、もちろん受け取る金額も増えます。
必ず得する・損するとは言い切れませんが、出費がかさむタイミングで、体外授精などの費用を補填したり、出産給付金が受け取れ得るのはありがたいといえるでしょう。
まだまだある!不妊治療を応援する保険
不妊治療用の保険というわけではありませんが、世の中には不妊治療を応援する保険があります。
アイアル「子宝エール」
アイアル少額短期保険株式会社の子宝エールは、不妊治療中でも加入できる医療保険です。
「不妊治療とは別に医療保険に加入したいと思ったのに、加入できなかった」
「保険の見直しをしたいけど不妊治療だからできない」
という方には、ちょうどよいかもしれません。
普通の医療保険と同じように、入院や手術で給付金を受け取れます。
子宮内膜ポリープ・帝王切開・流産・切迫早産などは給付の対象外ですが、妊娠中毒症や卵巣に機能障害など、女性によりそった補償が充実している保険です。
不妊治療の特約が不要になったときは、通常の医療保険として更新できます。
保険料は、月々2,000円前後でお手頃といえるでしょう。
東京海上「不妊治療費用等補償保険」
東京海上日動火災保険からは、「不妊治療費用等補償保険」が販売されていますが、これは企業や健康保険組合が契約者となります。
従業員とその配偶者も対象となり、男性側に原因がある男性不妊治療も補償の対象となるのがメリットです。
所得や年齢に制限がなく、企業の社内規定に基づいて、特定不妊治療で実際に支払った費用を補償してくれます。
特定不妊治療をおこなった人が、妊娠中に30日以上入院したときは、一時金が給付されます。
働いている会社で取扱いがあるか、支払われる額はいくらかなどについては、企業か健康保険組合に問い合わせてください。
補償内容はよいのですが、個人との契約をおこなっていないのが残念ですね。
不妊治療保険以外に利用できる制度は?
国や市区町村で利用できる制度に、助成金と医療費控除、高額療養費制度があります。
助成金
特定不妊治療については、国が助成制度をもうけています。
初回は、30万円まで、2回目からは15万円の助成金が支給されるのです。
ただし、どんな人でもOKといわれではなく、夫婦の所得が730万円未満、43歳以上の女性は対象外などの制限があります。
申請の窓口は、お住まいの都道府県の役所になるので、詳しくは電話で問い合わせるか、ホームページをご確認ください。
国とは別に、市区町村が独自に運用している助成制度もあります。
こちらは各自治体によって、条件や助成内容が異なるので、お住まいの市区町村役場に電話して確認してください。
医療費控除
不妊治療にかぎらず、年間の医療費が10万円を超えると、確定申告のときに医療費控除を受けられます。
病院を受診したときの費用のほか、薬代と交通費も控除の対象なので、全ての領収書を保管しておきましょう。
高額療養費制度
高額療養費制度は、1ヶ月の同じ病院における医療費の支払額が、高額になった場合、自己負担額を超えた部分を、あとから払い戻せる制度です。
保険適応内の、タイミング法や検査で高額になった場合は、利用しましょう。
あらかじめ高額療養費制度の申請をしておくと、自己負担額を超えた分は、支払わなくてよいので、不妊治療をはじめるときに申請しておきたいですね。
この記事もチェック!
↓
不妊治療保険まとめ
不妊治療の保険には、賛否両論あります。
「不妊治療が必要になったけれど、保険に入っていて家計の負担が軽減された」
「保険は使わなかったけれど、不妊症でなくてよかった」
「保険に入っていたのに、保障を受ける機会がなかったので損をした」
など、意見はいろいろあるようです。
結局のところ、あくまでも保険なので、損か得かは、人それぞれの考え方で変わるものかもしれませんね。
不妊治療保険のシュシュは、不妊治療の保障が欲しければ、不妊治療開始の2年前に加入しておく必要があります。
不妊治療を開始する前であれば、多くの保険を選択できるので、自分や家計にぴったりな保険はなにかを考えるタイミングといえるでしょう。