【医師監修】「胞状奇胎の原因や症状」確率は?hCGの基準値は?手術は必要?

この記事の監修医師
芥川バースクリニック・院長
芥川修先生

日本産婦人科学会認定医。「安心 安全 満足」の理念のもと、自然分娩だけでなく無痛分娩や和通分娩、アロマ分娩など患者様の希望に合わせたバースプランを提案し、満足度の高いお産を目指しています。

「胞状奇胎」という言葉を、聞いたことがありますか。

胞状奇胎とは、染色体異常を原因とする異常妊娠です。
切迫流産の症状があり、つわりがひどい場合、胞状奇胎である可能性があります。

胞状奇胎は発症率が低く、知名度も低いですが、大きなリスクをともなう病気です。

胞状奇胎とは受精卵の染色体異常のため、絨毛がブドウの粒々のようになって異常増殖する病気です。

ここでは、胞状奇胎の原因や症状、診断方法、治療についてまとめました。

胞状奇胎(ほうじょうきたい)とは?

受精卵
卵子と精子が受精すると、受精卵は分裂しながらゆっくりと移動し、やがて子宮内膜に着床します。

着床した受精卵は、胎児になる「胎芽(たいが)」と「絨毛(じゅうもう)」とよばれる部分に、分かれていきます。

絨毛とはその名の通り、絨毯の毛のような組織で、母体から酸素や栄養を胎児に運ぶ役割があります。

また絨毛はhCGとよばれるホルモンを分泌し、妊娠の維持に欠かせない黄体ホルモンの分泌を促す、重要な働きもしています。

正常妊娠であれば、絨毛は、胎芽(=胎児)から木の根っこのように子宮内膜に伸びていきます。

しかしその絨毛組織だけが異常増殖し、絨毛が水泡状に、どんどん膨れあがっていくことがあります。
このような状態を、「胞状奇胎」といいます。

水泡状に膨れあがった嚢胞(のうほう)が、粒々が集まったブドウの房のように見えることから、「ぶどう子」とよばれることもあります。

胞状奇胎は絨毛性疾患のひとつであり、胞状奇胎部分胞状奇胎の2種類に分かれます。

全胞状奇胎

受精卵
全胞状奇胎とは、受精時に卵子の核が不在のまま、精子由来の核だけが分裂増殖するためにおこるものです。

もともと核をもたない卵子に、精子が受精するケースと、受精時に卵子の核がなんらかの理由で消えてしまうケースが考えられます。

普通であれば受精卵は、ママの染色体23本とパパの染色体23本を合わせた46本の染色体をもっています。

しかし卵子の核がないということは、母親由来の染色体がなく父親由来の染色体23本が増えることで、46本の染色体を形成していることを意味します。

染色体の数だけ見れば正常なのですが、パパだけの遺伝子情報だけでは正常な胎児になることはありません。

そのため胎芽が育たず、絨毛組織だけが異常増殖する全胞状奇胎になるのです。

部分胞状奇胎

ひとつの正常な卵子に、同時にふたつの精子が受精することが原因でおこるのが、部分胞状奇胎です。

ふたつの精子が同時に受精したため、受精卵は、ママの染色体23本にパパの染色体2つ分の46本を合わせた、合計69本の染色体をもつことになります。

本来なら46本であるはずの染色体が69本あるために、染色体異常となり、胎児がうまく育ちません。

ただ全胞状奇胎とは違い、すべての組織が水泡状の嚢胞になるわけではありません。

染色体が正常な部分もあるので、絨毛組織の一部が、胞状奇胎の症状を示しながらも、胎芽の発育が見られることがあります。

この場合、基本的には、妊娠の継続は不可能です。

一卵性双生児の片方が正常な胎児で、片方が胞状奇胎となるケースもあり、その場合は、赤ちゃんの心音が確認でき、そのまま育つケースも、ごくまれにありえます。

しかし胞状奇胎は。、絨毛がんへと移行するリスクが高い病気のため、分娩まで妊娠を継続することは非常に危険です。

一般的には、胞状奇胎の治療、管理を優先し、完治したうえで、次の妊娠を目指すのが望ましいとされています。

胞状奇胎になる確率は?

胞状奇胎になる確率は、妊婦さん200〜500人につき1人(0.2〜0.5%)といわれています。

なかでも40歳以上の高齢妊娠と、20歳未満の若年妊娠では、発生率はさらに高くなります。

とくに40歳以上の女性の場合は、40歳未満の女性に比べると部分胞状奇胎の発生確率が、7倍以上にもなるという報告があります。

いっぽうで全胞状奇胎には、女性の年齢よりも男性の年齢が関係あり、45歳以上の男性の場合、リスクは約5倍になるという研究があります。

また胞状奇胎を経験した女性の場合は、そうでない女性に比べると、発生確率が約10倍高くなります。

ただなぜそのような染色体異常が起こるのかについては、原因がはっきりわかっておらず、確実な予防法が確立されていないのが現状です。

参照:名古屋大学医学部産婦人科「絨毛性疾患」

参照:British journal of obstetrics and gynaecology「Parental age and risk of complete and partial hydatidiform mole.(親の年齢と、全胞状奇胎および部分胞状奇胎の相対リスク)」

参照:婦人科癌~MDアンダーソン癌センターに学ぶ癌診療~「第14章妊娠性絨毛性疾患」

胞状奇胎の症状と診断


胞状奇胎は、受精卵が子宮内膜に着床した初期の段階でおこる病気のため、妊娠初期で発見されることがほとんどです。

妊娠がわかると、通常、妊娠4〜7週の間に産婦人科でエコー検査(超音波検査)をおこないます。

最近はエコー検査の精度も上がっており、このときのエコー検査によって胞状奇胎が発見されることも多いです。

胞状奇胎の症状

胞状奇胎を発症すると、絨毛が異常分裂を起こすために、子宮内膜にたくさんの水泡ができ、不正出血や腹痛を起こします。

妊娠初期の不正出血で、もっとも疑われるのは切迫流産ですが、切迫流産の場合は、hCGが減少し、つわりが軽くなるのが普通です。

しかし胞状奇胎の場合は、不正出血に加え、hCGの分泌が大量になるためつわり症状は悪化します。

つまり胞状奇胎の症状としては、「切迫流産の症状があるのに、つわりがひどい」のが特徴です。

上記も含めて、胞状奇胎の症状としては次のようなものが挙げられます。

  • つわりがひどい
  • 不正出血がある
  • 暗い赤色のオリモノがみられる
  • 妊娠週数に対して子宮が柔らかく大きい
  • 妊娠初期からむくみなど妊娠高血圧症候群のような症状がある

初期段階で発見された場合は、上記のような自覚症状がまったくないケースもありえます。

また上記はあくまでも典型的な症状であり、hCGの分泌に異常がみられないケースもあるのです。

その場合はつわりの症状も軽く、エコー検診でも粒状の陰影がはっきり確認できないことがあるため、通常の流産なのか、胞状奇胎なのかの区別が難しくなります。

流産としての処置後に、組織検査をして、はじめて胞状奇胎とわかるのは、そういう理由があるためです。

すこしでも、異常や不安を感じた場合には、すみやかに医師に相談しましょう。

胞状奇胎の診断方法

最近では、エコー検査によって発見されることが多い胞状奇胎ですが、それだけで診断確定することが難しい場合もあり、さまざまな検査を組み合わせて診断します。

経膣エコー検査

胞状奇胎の診断方法として、もっともポピュラーなのは経膣エコー検査です。

経膣エコー検査とは、膣から、超音波を放出する器具を挿入して、子宮内の様子をみる検査です。

最近は妊娠検査薬が手軽に入手できるようになり、多くの女性が妊娠早期の段階で産婦人科を受診するようになりました。

病院では妊娠を確認するために、エコー検査を行いますが、早期の段階ではお腹の上からのエコー検査では、内部の確認が難しいため、経膣エコー検査をおこなうのです。

このときに、粒状の陰影が発見されると、胞状奇胎である可能性が高くなります。

典型的な全胞状奇胎の場合は、子宮内に水泡状の粒々が多く見られるので、比較的に診断しやすいのですが、部分胞状奇胎の場合には、胎嚢も確認できるために、判断が難しいこともあります。

尿検査、血液検査でhCG値を測定

エコー検診だけでは判断しにくいケースや、エコー検査の結果を裏付けるために、尿検査や血液検査でhCG値を調べることがあります。

絨毛は、hCGというホルモンを分泌する働きをもちます。
胞状奇胎の場合、その絨毛が異常増殖するため、尿や血液中のhCGが通常の妊娠より高値をしめす傾向にあります。

尿中のhCG値が10万~100万mlU以上を示した場合に、胞状奇胎である可能性が高くなります。
正常妊娠の場合でも妊娠10週ごろには、hCG値が10万程度まで上がることがあるため、10万以上が胞状奇胎の判断基準値といわれています。

参照:日産婦誌59巻11号研修コーナー「D.産科疾患の診断・治療・管理」

そのほかの検査

上記以外でも確定できない場合や、さらにくわしく検査が必要な場合は、遺伝子検査、
MRI、CT、生体組織診断、胸部レントゲン、生化学検査(腫瘍マーカー)
などの検査が必要に応じておこなわれます。

胞状奇胎の進行

胞状奇胎は、早期発見し、適切な治療や経過観察を行うことで完治できる病気ですが、発見が遅かったり、転移した場合、侵入奇胎や、絨毛がんに移行するリスクが高まります。

胞状奇胎の患者さんの、約10〜20%が侵入奇胎を発症します。
またそのうちの1〜2%は、絨毛がんに移行します。

それらのリスクを回避するためにも、早期発見と適切な治療、十分な経過観察が必要です。

参照:名古屋大学 医学部 産婦人科「絨毛性疾患」

侵入奇胎

胞状奇胎が転移し、子宮筋腫や筋層の中まで入り込むケースを「侵入奇胎」といいます。
そのうち約30%は、肺への転移がみられます。

悪性腫瘍ではありませんが、一種の腫瘍性病変であり、がんになる一歩手前といえる状態です。

侵入奇胎は、胞状奇胎発生後、6ヶ月以内に発生することが多いです。
また全胞状奇胎からの発生が、ほとんどを占めていますが、部分胞状奇胎からの進行もまったくないとはいいきれません。

参照:名古屋大学 医学部 産婦人科「絨毛性疾患」

絨毛がん

「絨毛がん」とは、絨毛細胞から発生した悪性腫瘍で、進行が早いのが特徴です。

肺へ転移する確率が高いため、疑われれる場合は、胸部のCTによる検査がおこなわれます。
さらに肺だけでなく、リンパや血液を通して、膣、脳、肝臓、腎臓など全身に急速に転移するリスクがあります。

絨毛がんの約半数近くは、胞状奇胎から進行するケースです。

絨毛がんは、増殖、進展、移転のスピードの早い悪性度の高いがんではありますが、抗がん剤がよく効くがんでもあります。

早期発見ができれば治癒率もかなり高く、治療後の妊娠の可能性もあります。

胞状奇胎の治療方法と経過観察


胞状奇胎と診断されたら、残念ながら妊娠の継続はできません。

全胞状奇胎の場合は、そもそも胎芽(胎児)が存在していませんし、部分胞状奇胎の場合も、胎芽が正常に発育することはほとんどありません。

また胞状奇胎は放置しておくと、侵入奇胎や絨毛がんに移行するリスクが高いため、妊娠の継続よりも、治療を優先するのが普通です。

完治すれば、また妊娠することは可能なので、胞状奇胎が発見されたら、まずは治療に専念することが大切。

胞状奇胎の治療としては、胞状奇胎を除去する手術をおこない、その後通院にて約6ヶ月の経過観察が必要となります。

子宮内容除去術

子宮内の胞状奇胎を完全に除去するためには、子宮内容除去術という手術が必要です。
膣から器具を挿入して、子宮の中身を掻きだすという手術をおこないます。

子宮内に少しでも胞状奇胎を残すと、残った組織が原因で侵入胞状奇胎や、絨毛がんをひきおこす原因となるのです。

完全に除去するために、最初の手術から1週間の間隔をあけて、もう一度手術をおこないます。

手術自体は、そう難しいものではありませんが、痛みを伴うため、手術時には麻酔を使用します。

症状や術後の状態にもよりますが、通常、日帰りか1泊2日程度の入院となります。

術後の経過観察

胞状奇胎は、手術で異常分裂した細胞を取りのぞくことも大切ですが、術後の経過観察がとても重要です。
約半年~1年を目安とします。

少しでも胞状奇胎が残っていると、そこから侵入奇胎や絨毛がんに進行する可能性があるからです。

また手術前の検査では発見されなかった転移が、術後に現れることもあります。
そのため手術後は定期的に通院して、hCG値の測定をし、慎重に観察します。

経過が順調であれば、hCGの数値も少しずつ低くなるのが普通です。

最初は、1週間に2回程度、hCG値を測定します。
経過が順調であれば、その後5週目、8週目、(12週目)、24週目とhCG値を測定し、正常値まで下がれば、経過良好という判断をします。

hCG値が下降しない場合

hCG値が下がらない、いったん下がったにも関わらず再び上昇するような場合は、侵入奇胎や絨毛がんに進行した可能性があります。

その場合は、病理検査や、MRI、CTなどくわしい検査が必要です。

侵入奇胎や絨毛がんであることが確定した場合は、抗がん剤を用いた化学療法で、治療をすすめます。

ただ症状や年齢、今後の妊娠を希望しない場合には、子宮全摘出手術をおこなうこともあります。

胞状奇胎は完治する!経過が順調なら、次回妊娠は可能


胞状奇胎は、きちんと治療、管理すれば、完治する病気であり、その後の妊娠も可能です。

最近では、胞状奇胎の治療後に、妊娠、出産する女性が増えています。

ただしhCG値が基準値となった後も、半年から1年は再発のリスクがあるために、避妊をするように医師からいわれることが多いでしょう。

医師から妊娠の許可がおりるまでは、十分に経過観察を続けながら、焦らず体をゆっくりと休めてくださいね。

注目記事

【おすすめしたい葉酸サプリランキング】効果・成分・値段で徹底比較!

葉酸の含有量や一緒にとれる栄養成分など、あらゆる角度から調べ、本当におすすめしたい葉酸サプリメント3つを選びました!

         

【2018年版!妊娠線予防クリームランキング】効果トップ3はどれ?選び方のポイントは?

妊娠線クリーム選びで大事にしたいポイントと、先輩ママから支持された評判の妊娠線クリームをランキングでご紹介します。

気に入ったらシェア

 

この記事の監修医師・専門家

スポンサーリンク

スポンサーリンク