羊水混濁ってなに?赤ちゃんに影響は?原因と理由まとめ
「羊水混濁(ようすいこんだく)」という言葉をご存じでしょうか。
羊水混濁とは、羊水に赤ちゃんの便が混ざってしまうことを指します。
羊水混濁は、エコーや通常の妊婦健診ではなかなか見つけられないこともあり、ときには赤ちゃんに影響を及ぼすことがあるのです。
羊水混濁になる原因や赤ちゃんへの影響、予防法などについて解説していきます。
羊水混濁とは
赤ちゃんを守っている羊水は、赤ちゃんの周りを包んで保護をするクッションの役割があります。
ほかにも、赤ちゃんが育ちやすいように、おしっこの除去などを行いながら、バランスのよい環境をつくる働きをしています。
赤ちゃんは羊水を飲むことで飲み込みや呼吸の練習をし、おしっこを出して外での生活に備えているのです。
この羊水ですが、弱アルカリ性の液体で、透明もしくは若干白っぽい色であるのが通常です。
しかし、黄色や黄緑色、緑色になってしまうことや茶色っぽい粒が浮かぶケースがあります。
これは、赤ちゃんがおなかの中で胎便(うんち)をしてしまったことが原因で、羊水の色が濁ってしまうからなのです。
妊娠のうち、約1割に羊水混濁がみられるといわれており、胎便の量が多いほど緑色っぽく濁ります。
羊水混濁の原因
通常の赤ちゃんは産まれて0~2日後に初めて胎便を排泄します。
しかし、おなかの中で赤ちゃんが低酸素状態になってしまうと、赤ちゃんの腸の動きが異常に活発になり、うんちをしてしまいます。
その便が羊水に混ざることで、羊水が濁ってしまうのです。
低酸素状態が起こる理由
では、なぜ赤ちゃんがお腹の中で酸素不足におちいるのでしょうか。
これは、出産前に胎盤がはがれる「常位胎盤早期剥離」が起こり、赤ちゃんに酸素が行き届かなくなることによって低酸素状態になるのです。
ほかにも、妊娠42週を過ぎた過期産で胎盤の機能が低下したり、へその緒が赤ちゃんの首に巻き付いた場合も低酸素状態につながります。
羊水混濁の影響
羊水混濁に陥ると、お腹の赤ちゃんにはどのような影響が考えられるのでしょうか。
胎便吸引症候群
赤ちゃんがおなかの中で胎便をして羊水が濁っても必ず病気になるというわけではありません。
問題なのは、この濁った羊水を赤ちゃんが飲み込んでしまったときなのです。
「胎便吸引症候群(MAS:Meconium aspiration syndrome)」とは、赤ちゃんが羊水に混ざった胎便を気道内に吸引し、呼吸障害を起こすことを指します。
赤ちゃんが低酸素状態になると、呼吸中枢が刺激されてあえぎ呼吸をするため、便で汚染された羊水を吸い込んでしまうことで起こるのです。
濁った羊水を吸い込んでしまっても、まもなく出産すれば問題ないといわれています。
しかし、羊水混濁が起こって出産までに時間が経つと、胎便吸引症候群を引き起こす恐れがあるのです。
胎便吸引症候群によって引き起こされるもの
胎便吸引症候群に陥ると、赤ちゃんにはどのような症状が現れるのでしょうか。
- 胎児機能不全
- 新生児仮死
- 陥没呼吸
- 呻吟(しんぎん)
- チアノーゼ
- 皮膚やへその緒の着色
- 呼吸が速い
胎児機能不全とは、妊娠中または分娩中に赤ちゃんの呼吸と循環機能に問題が生じ、健康を害したり、将来的に障害が現れる可能性もある状態を指します。
胎児機能不全は母体か胎児のどちらかに問題がある場合に起こる病気なのですが、母体に原因がある場合、羊水混濁やへその緒、胎盤の問題が考えられます。
新生児仮死の定義は、日本産婦人学会で次のように定められています。
出生時の新生児にみられる呼吸,循環不全を主徴とする症候群である。
先天異常や未熟性がない場合,大半は胎児の低酸素・虚血に続発する。
新生児仮死は、赤ちゃんが出生後すぐに呼吸器系や循環器系の不全状態におちいる状態です。
わかりやすくいうと、赤ちゃんがうまく呼吸ができなかったり、酸素が身体にまわっていない状態になるということです。
時間が経つと臓器障害に発展する恐れがあるため、蘇生処置を行う必要があります。
蘇生処理では、体温調節や吸引、気道確保などが行われます。
容体によっては、薬物を投与されることもあるのです。
新生児仮死になった赤ちゃんは、回復した後もしばらくはNICU(新生児集中治療室)に入る必要があります。
新生児仮死の状態が長引くと、脳細胞がダメージを受けるため、後遺症が現れる可能性は高まります。
また、胎便吸引症候群になると、身体に酸素がいきわたらなくなり、チアノーゼという粘膜が青紫色になる症状になるケースがあります。
酸素が明らかに不足している状態なので、すぐさま酸素吸入などの処置が必要です。
赤ちゃんが羊水の中で排便すると、便の色が皮膚や爪に着色してしまうこともあります。
羊水混濁があっても赤ちゃんに異常なしが大半
羊水混濁が起こるのは、いつかわかりません。
妊娠中に起こるということはまれで、もっとも多く起こるのは妊娠42週を越えたころで約3割近くもの赤ちゃんにみられるといわれており、出産時に起こるのがほとんどです。
もし妊娠中に羊水混濁が起こっても、健診のときなどにすべてがわかるというわけではないのです。
通常はエコーで黒い画面の中に赤ちゃんが白っぽく映っていると思いますが、羊水が濁っていると赤ちゃんの周りが白くかすんだように見えることもあります。
この場合は、そのまま緊急的に入院して出産というケースが多いようです。
羊水混濁が起こるのは出産のうちの1~2割だといわれていますが、出産件数を考えると相当な数になります。
つまり、よくあることだということを覚えておいておきましょう。
また、すぐに適切な治療や処置を行うことで、何事もなくママと一緒に退院することもできます。
羊水混濁の予防
羊水混濁を事前に防ぐには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
妊婦健診は毎回受ける
前述に述べたように、羊水が濁っているかどうかを、妊婦健診のエコー検査で見分けることは難しいようです。
ほとんどの場合、出産時または破水した際に羊水混濁だとわかるのです。
しかし、赤ちゃんの酸素不足の原因となり得る常位胎盤早期剥離などは、妊婦健診で見つかりやすいのです。
子宮内の酸素不足が羊水混濁を招くため、酸素不足の要因をいち早く見つけることが、羊水混濁の予防になるのではないでしょうか。
妊娠中期にもなると、毎回の妊婦健診でエコー検査を行います。
そのときが問題を早期発見できるチャンスなので、妊婦健診は毎回受けることが大切です。
酸素不足が起こった場合、赤ちゃんの心拍数は下がり、胎動が減る傾向にあります。
もしいつもより動きがないと感じた場合は、かかりつけの病院に相談しましょう。
なお、羊水混濁が起きるのは、妊娠42週過ぎが大半だといわれています。
予定日を過ぎても陣痛や破水が起きない場合は、羊水混濁の心配がないか病院の先生に相談することをおすすめします。
生活習慣に気をつける
子宮内の酸素不足は、ママの生活習慣にも影響されます。
たとえば、ママに喫煙の習慣があると、赤ちゃんへの血流が減少して酸素不足を招く恐れがあります。
また、ママが重い喘息を持っている場合も、子宮につながる血管が収縮して低酸素状態を招くことがあるのです。
血流の減少を防ぐために、喫煙習慣のあるママは禁煙に努めたり、喘息持ちの場合は妊娠中でも治療と風邪の予防に専念することが大切です。
以上、羊水混濁の原因や影響、予防法などをお伝えしました。
羊水混濁は全妊娠の1~2割程度に起こるとされており、決して低くはない確率です。
出産が近づくにつれて心配するママもいるでしょう。
妊婦健診を毎回受けたり、普段の生活で赤ちゃんの酸素不足を招くような要因を取り除くことが妊娠中のママにできることです。
破水時や出産時に羊水混濁だと判明した場合でも、適切な処置を施すのが早ければ早いほど後遺症を引き起こす可能性が低くなります。
その点は病院の関係者に頼り、ママは今からできることを意識して行いましょう。