【医師監修】妊婦は痔になりやすい?原因や対処法は?妊娠中の市販薬は?

妊娠・出産を機に、痔になったというママは多いでしょう。

産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、思うように病院を受診できません。

妊娠中にしっかり予防やケアをしておくことが大切です。

ここでは、妊婦さんが痔になりやすい原因や対処法妊娠中にできる治療などについてまとめてみました。

妊娠中は痔になりやすいってほんと?

妊娠中は、さまざまなマイナートラブルがありますが、痔もそのひとつです。

妊娠・出産をきっかけに痔になったという女性は多いでしょう。

妊婦さんが痔になりやすい原因について詳しくみてみましょう。

痔になる原因1:黄体ホルモン

女性ホルモンには、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)があります。

この2つのホルモンが交互に分泌されることで月経がおこりますが、妊娠すると卵胞ホルモンが抑えられ、黄体ホルモンが分泌し続けるのです。

黄体ホルモンは、妊娠の継続には欠かせないものですが、大量に分泌されると腸の働きが悪くなります

腸の働きが鈍ることで便秘がちになり、それが痔の原因になるのです。

黄体ホルモンには血管を硬くする作用もあるので、そのせいで血流が悪くなることも痔を悪化させる要因といえるでしょう。

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「妊婦さん、子育て中のママへ、治療法や日常生活での注意点解説」

痔になる原因2:子宮による直腸への圧迫

痔になる原因のひとつにうっ血があります。

うっ血とは、血行が悪くなることで静脈瘤(静脈に血が溜まっている状態)ができることです。

妊娠中期から後期にかけて子宮が大きくなり、直腸や肛門付近を圧迫しはじめます。

そのため直腸から肛門周囲にかけての静脈がうっ血し、痔ができやすくなるのです。

また、大きくなった子宮は腸を圧迫して、腸が狭まるので便がたまりやすくなります。

便秘が悪化することで、さらに痔を重症化させることもあるのです。

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「妊婦さん、子育て中のママへ、治療法や日常生活での注意点解説」

痔になる原因3:いきみ

排便の際にいきむことも、痔になる要因のひとつです。

黄体ホルモンの影響や、大きくなった子宮による圧迫で便秘が悪化すると、排便のたびにいきむ必要があります。

いきんで硬い便を出すことで、肛門周辺の皮膚が裂けたり、切れたりする原因になるでしょう。

内側にできた、いぼ状の痔が悪化すると、いきむときに脱肛(いぼ状のものが肛門から外に飛び出すこと)することもあります。

妊婦さんは、分娩のときに強くいきむため、それが原因で痔になる方もいるようです。

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「妊婦さん、子育て中のママへ、治療法や日常生活での注意点解説」

痔になる原因4:血行不良

同じ姿勢を長く続けることは、血行不良をおこして痔を悪化させます。

妊娠初期はつわりがひどくて、横になって過ごすことが多いという女性も多いでしょう。

中期から後期にかけてはお腹が大きくなるにしたがって、どうしても動きが制限されます。

切迫流産や早産、出血などがあり、医師から安静を言い渡されている場合は、1日のほとんどを横になって過ごすしかありません。

このように妊婦さんは、同じ姿勢を続けることが増えるため、血行不良になりやすく、痔を悪化させることにつながります。

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「妊婦さん、子育て中のママへ、治療法や日常生活での注意点解説」

妊婦さんがなりやすい痔の種類

日本人に多いと言われている痔ですが、大きくは3種類の痔があり、それぞれに症状も治療方法も異なります。

それぞれの症状や原因、対処法をみていきましょう。

いぼ痔(痔核)

痔に悩む妊婦さんの割合が、もっとも高いと言われているのがいぼ痔です。

いぼ痔には、肛門の内側(直腸側)にできる内痔核と、肛門の外側にできる外痔核があります。

いぼ痔の原因

いきみや直腸〜肛門周辺への圧迫により、肛門周辺の静脈がうっ血して、いぼ状に腫れることが原因です。

妊婦さんの場合、大きくなった子宮が肛門周辺を圧迫することや、分娩時に長時間いきむことからいぼ痔を発症します。

いぼ痔の症状

いぼ痔の症状は、内痔核か外痔核かによって違います。

それぞれの症状についてみていきましょう。

内痔核の症状

軽症の間は、排便時に出血がみられるくらいで、痛みはほとんどありません
重症になると排便時に脱肛(いぼが肛門の外に出てくる)をおこします。
悪化すると、歩いただけでも脱肛することもあるでしょう。

  • 外痔核の症状

出血は少ないものの、肛門の外側にしこりのようなものができ、痛みを感じます
重症の場合は、椅子に座ることも難しいほど激痛をともなうでしょう。

いぼ痔のなおし方

いぼ痔は、軟膏(塗り薬)・坐薬・内服薬で治療します。

以下のような場合は、除去手術が必要なこともあるでしょう。

  • 内痔核:投薬での治療で様子をみて、いぼが小さくならない
  • 外痔核:炎症が起きて、痛みがひどく続く

局所麻酔で手術をおこない、日帰りで済むケースも多いようです。

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「いぼ痔ってなぁに? ~外痔核~編」

切れ痔(裂肛)

ムリにいきんで硬い便を出そうとすることで、肛門周辺の皮膚が切れたり、裂けて傷になるのが、切れ痔です。

妊娠中は、普段便秘ではない人も、黄体ホルモンの影響・つわり・水分不足などから便秘になりやすくなっています。

切れ痔の原因

便秘で硬くなった便をムリやり出そうとすることで皮膚が切れたり、裂けたりすることが原因です。

下痢がひどい場合も、肛門周辺の皮膚が荒れて切れ痔をおこすことがあります。

切れ痔の症状

排便のたびに皮膚が切れたり、裂けるために、ズキズキとした痛みを感じます。

切れた場所から出血すると排便の後、トイレットペーパーに血がつくようになるでしょう。

切れ痔のなおし方

基本は、軟膏(塗り薬)、坐薬、内服薬での治療です。

薬物治療と並行して、便秘対策もおこないましょう。

痛いからといって便意を我慢すると、便秘を悪化させ、ますます切れ痔が治らないという悪循環に陥ることもあります。

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「きれ痔ってなぁに? 裂肛編」

あな痔(痔瘻)

痔瘻(じろう)は、肛門の周囲が化膿して、膿がたまったり、膿のトンネルができて膿が外に流れ出るような状態です。

症状が一旦落ち着いても、再発を繰り返すことが多く、早めの受診と根治が大切でしょう。

あな痔の原因

肛門の付近の肛門小窩に細菌が侵入して、炎症・化膿することが原因です。

あなじ痔の症状

発熱をともなうこともあり、排便時以外でも、膿が溜まっている周辺に異物感があります。

悪化すると排便以外でも激痛を感じるでしょう。

重症化すると、膿のトンネルができて、化膿を繰り返す人も多いようです。

あな痔のなおし方

あな痔の治療は、投薬や生活習慣の改善では効果が期待できません

根治治療としては化膿部分を切り取って排除する、切開手術が必要です。

ただしあな痔は、妊娠中に悪化することが少ないため、手術をするのであれば産後におこなうというケースが多いでしょう。

参照:日本大腸肛門病会「妊娠・分娩と痔疾患」

妊娠中の痔の対処法

妊婦さんが痔になった場合、通常の治療が難しくなります。

とくに妊娠初期は、使用できる薬も限られるでしょう。

妊娠中は普段よりも痔になりやすいものですが、だからこそ、痔の予防が重要です。

痔の予防法

痔の予防法には、次のようなものがあげられます。

対策その1:便秘を防ぐ

便秘は、痔をひきおこす原因のひとつです。

便秘対策は、痔の予防にもつながります

便秘を防ぐために、以下のことに注意しましょう。

  • 水分補給をしっかりする
  • 食物繊維をとる
  • 朝食を食べる
  • 刺激の強い食べ物は控える
  • 便意のあるときは我慢せずにトイレに行く

食物繊維には、便を柔らかくする役割を持つ水溶性食物繊維と、便の量を増やす不水溶性食物繊維があります。

便秘のときは、水溶性食物繊維を多めに摂るといいでしょう。

  • 不溶性食物繊維が多く含まれている食品:切り干し大根・あずき・えのき・エリンギ・ほうれん草・キャベツなど
  • 水溶性食物繊維が多く含まれている食品:山芋わかめ・ひじき昆布大麦など
  • 不溶性、水溶性食物繊維が両方ともバランスよく含まれている食品:納豆ごぼう人参・なめこ・オクラ・アボカド・キウイ・プルーンなど

対策その2:血行促進

血行が悪くなると、静脈がうっ血して痔の原因となります。

血行をよくするために、以下のことを意識してみましょう。

  • 長い間、同じ姿勢を続けない
  • お風呂に入って体をよく温める
  • 体を冷やさない(とくに腰、おしり。冬はカイロを貼るのもいい)
  • トイレの便座を保温するか、便座カバーをつける
  • 適度な運動をする

お風呂に入って血行をよくすることは痔の予防につながりますが、肛門周辺の皮膚が化膿している場合は、湯船に浸かることが逆効果になることもあります。

化膿や傷口が大きい場合は、入浴してもいいかを医師に確認しましょう。

参照:東海大学医学部付属大磯病院「痔を再発させないために」

対策その3:おしりへの負担軽減

おしりへの負担をできるだけ軽くするように、以下のことを心がけてください。

  • トイレに長い時間こもらない
  • トイレでいきみすぎないようにする
  • 温水洗浄式便座を活用する(よく乾かすことも忘れずに)
  • 過労やストレスをさける

参照:東海大学医学部付属大磯病院「痔を再発させないために」

痔になってしまった場合の治療法

どんなに気をつけていても、妊娠中は、黄体ホルモンの影響や大きくなった子宮による圧迫から痔になりやすいものです。

もし、「痔になってしまったかな」と思ったら、まずは産婦人科の担当医に相談してみましょう。

初期の痔は、日常生活の改善や薬で、病状が回復することも多いのです。

また、出血しているからといって、必ずしも痔とは限りません。

違う病気が隠れている可能性もあります。

自己判断せずに、医師の診断を受けると安心です。

参照:マルホ株式会社「痔のQ&A よくある質問」

参照:岡山の医療健康ガイドMEDICA「妊婦さん、子育て中のママへ、治療法や日常生活での注意点解説」

痔の薬の種類

痔の治療に使われる薬には、外用薬と内服薬があります。

【外用薬】
痛みや腫れ、出血を抑えるものです。
軟膏や坐薬タイプがあり、症状によって使い分けます。
【内服薬】
症状によって、便を柔らかくする薬や、炎症を抑えるための薬、鎮痛剤が処方されるでしょう。

痔の治療で使われる外用薬(坐薬や軟膏)の中には、ステロイドが含まれているものがあります。

ステロイドとは副腎皮質ホルモンのひとつで、塗り薬・内服薬・点鼻薬・点眼薬・注射など幅広く使われており、からだの免疫力や皮ふや体内の炎症を抑制する働きがあります。

塗り薬として皮ふからステロイドが吸収されるのは、ごくわずかなので、胎児への影響はないとされています。

しかしながら、妊婦への安全性がはっきりと確認されているわけではありません。

赤ちゃんへの影響を考慮して、ステロイドや抗生物質は妊婦には使用しない方針をとるお医者さんもいます。

その場合は、非ステロイド系の軟膏や座薬が処方されるでしょう。

参照:兵庫県保険医協会「妊婦と痔」

妊娠中に痔の市販薬を使ってもいいの?

妊娠中に薬を使うのであれば、担当医に相談して、妊婦さんでも使える薬を処方してもらうことです。

市販薬を使うのであれば、ボラギノールM軟膏などステロイド非配合の薬を選びましょう。

薬剤師さんのいる薬局で、妊婦が使用できるものを選んでもらうのもオススメです。

痔の痛みを軽減する鎮痛剤や便秘薬を購入する場合も、医師や薬剤師さんに相談するようにしましょう。

参照:兵庫県保険医協会「妊婦と痔」

参照:マルホ株式会社「痔のQ&A よくある質問」

家にある置き薬で対処できる?

痔の症状がツラいけれど、病院が休みだったり、受診する時間が取れないこともありますよね。

そんなときは、家庭にある置き薬で対処する方法もあります。

ここでは、置き薬でよくある、オロナイン・馬油・ワセリンについてみていきましょう。

【オロナイン】
消毒・殺菌効果があるので、切れ痔などの炎症を抑えるのに効果的です。

【馬油】
血行を促進する効果があります。
患部を清潔にしてから塗りましょう。
入浴後の身体が温まっているときの使用がオススメです。

【ワセリン】
粘膜を保護する役割があります。
患部への刺激を減らして、痛みを和らげる効果が期待できるでしょう。

これらの薬は痛みを一時的に緩和する効果があるものの、根本的な治療にはなりません。

あくまで応急処置と考えて、早めに病院で治療しましょう。

妊婦さんの痔の治療

通常、初期段階の痔に関しては、食生活や排便習慣の改善などの生活療法と薬物療法が中心となります。

薬を使っても症状が改善しない場合、強い痛みなどで日常生活に支障がある場合は、手術をおこなうことになるでしょう。

ただし、妊婦さんの場合は、胎児へ影響を及ぼさないように、治療方法や時期に配慮が必要です。

妊娠初期:妊婦さんの身体も胎児もまだ不安定な状態です。
薬物治療はなるべく避けた方がよいでしょう。
肛門周辺の肌を清潔に保ち、食事に気をつけてください。

妊娠中期〜後期:症状が改善しない場合、あるいは悪化した場合は、薬物治療をおこないます。
妊娠中は、使用できる薬に制限がありますので、外用薬、内服薬いずれも医師の指示にしたがってください。
妊娠中に手術をするかどうかは、症状および医療機関や医師の方針によっても異なります。

出産後:妊娠中に手術ができず、出産後も症状が改善しない場合は、出産後に治療をしましょう。
次の妊娠を考えている場合は、その前にしっかりと痔を治しておくことが大切です。

いぼ痔の妊婦さんの場合、出産(分娩)の際に、長時間にわたる強いいきみで脱肛することがあります。

分娩前に、産婦人科の医師か助産師に、痔の症状を伝えておきましょう。

脱肛を防止するために、助産師が「脱肛保護処置」をしてくれます。

こんな時はすぐ病院に

下記のような症状がみられた場合は、次の妊婦検診を待たずに、できるだけ早く受診しましょう。

  • 発熱や膿を伴う場合
  • 急激に強い痛みが現れた場合
  • 出血がひどい場合(いぼ痔が破裂すると大量出血することもあります)
  • 排便時以外でも脱肛して戻らない場合

痔は悪化するほど治療に時間がかかります。

痔だと思っていても、ほかの病気が隠れていることもあるでしょう。

自己判断せずに病院で診察を受けてくださいね。

妊娠中の痔は早めに対処しよう

妊娠中は、ホルモンの影響や大きくなった子宮の圧迫により、痔になりやすいといわれます。

デリケートな部分のトラブルなので、受診するのを躊躇しがちですが、悪化すると痛みが増すうえに治療も長引きます

痔になったかなと思ったら、早い段階で担当の先生に相談しましょう。

女性は痔になりやすい女性特有の事情を抱えています。

苦痛を我慢したり一人で悩まずに早めに診察を受けるようにしましょう。

初期段階の痔であれば、薬物治療と生活習慣の見直しで症状が改善することもあります。

出産後も痔が治らないようなら、一度肛門科の診察を受けるようにしましょう。

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