さい帯血とは?提供したいときはどうすればい?

「臍帯血(さいたいけつ)バンク」という言葉を聞いたことがありますか?

白血病など、血液の病気をもつ患者さんへの治療を目的として使われる「さい帯血」を保管、提供する公的な機関です。

このさい帯血は、出産のときに無償で提供してもらうもの。

出産時にしかできない特別な献血と、考えてもらったらわかりやすいかもしれません。

ここでは、さい帯血とは何か、どのような方法でどこで提供できるのかについて紹介しています。

>>さい帯血の提供の仕方や条件が知りたい人はここからスキップ

さい帯血とは?


臍帯(さいたい)というと聞きなれない方も多いと思いますが、一般にはへその緒と呼ばれているものです。

子宮のなかの胎児は、胎盤を通して母体から栄養や酸素を受けとったり、老廃物を母体に排出したりしています。

その胎盤と胎児をつなぐのが臍帯(へその緒)です。

さい帯血は、さい帯と胎盤に含まれる血液のことで、出産時にのみ採取が可能です。

さい帯血には、血液を作る細胞が豊富に含まれているため、特定の病気の治療に使用されます。

参照:サイト厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ」
参照:日本赤十字社 さい造血幹細胞移植情報サービス「さい帯血を提供したい」

造血幹細胞が豊富に含まれるさい帯血

血液には、赤血球白血球血小板などの細胞があり、それぞれ別の働きをしています。

  • 赤血球:酸素を体の隅々に届け、二酸化炭素を肺に回収する
  • 白血球:体内に侵入した細菌などの異物を排除する
  • 血小板:出血時に血を止める役割を持つ

さい帯血には、これらの細胞の元となる造血幹細胞が豊富に含まれています。

造血幹細胞は骨髄からでも採取できますが、胎児の血液であるさい帯血に含まれる造血幹細胞は、未分化で増殖能力が高く、少数でも骨髄の機能を回復させることができます。

参照:日本骨髄バンク「その他の造血細胞移植について」
参照:一般社団法人中部さい帯血バンク「提供したい」

さい帯血の採血


赤ちゃんが生まれるとへその緒(臍帯)は切られ、ママの体に残った臍帯と胎盤は不要になります。

それらは自然に後産として排出されるのですが、胎盤がまだ母体にある間に臍帯の血管に針を刺してさい帯血を採取します。

すでに赤ちゃんは生まれて臍帯と切り離されている状態ですから、赤ちゃんには何の影響もありません。

もともと排出されて捨てていたものですから、ママの体に負担がかかることも、痛みもありません。

さい帯血の献血は、無償での提供となります。

強制されるものでもなく、希望者のみがおこなうものです。


参照:日本赤十字社九州ブロック血液センター「さい帯血バンク」

さい帯血バンクとは?


分娩時に無償で提供してもらったさい帯血を保管、管理し、白血病などの患者さんを治療するために提供する機関が、公的さい帯血バンクです。

提携している産婦人科で、分娩時に採取されたさい帯血は、公的さい帯血バンクに運ばれます。

公的さい帯血バンクでは、血液の品質管理における厳しい基準が設けられています。

運ばれた血は、その基準にそって検査、調整が行われ、摂氏マイナス196度の液体窒素の中で保存される流れです。

治療のためにさい帯血移植を希望する患者さんがいる場合、保存してあるさい帯血から適合するものを、要請のあった医療機関に提供します。

参照:一般社団法人中部さい帯血バンク「提供したい」

さい帯血移植とは?

さい帯血移植とは、白血病をはじめとする根治が難しい血液疾患などに対する治療法です。

さい帯血に含まれる造血幹細胞を移植することで、患者さんの血液を健康なものに置き換えることができます。

白血病や再生不良性貧血などで正常な血液を作れない患者さんが、さい帯血移植治療を希望する場合、公的さい帯血バンクは、適合する血液を検索します。

現在、全国の公的臍帯バンクには1万点以上のさい帯血が保管されており、適合率は約90%です。

適合したさい帯血が見つかれば、要請医療機関に搬送し、患者さんに輸注(静脈から点滴投与する)という方法で移植します。

移植後、造血幹細胞が骨髄で増殖を始め、白血球数が増えてくることを生着といいます。

移植しても必ずしも生着するとは限らず、移植が成功したかどうかは、生着が確認されてはじめてわかります。

参照:東京都福祉保健局「さい帯血移植について」
参照:国立がん研究センター「造血幹細胞移植の治療の流れ」
参照:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(さい帯血関連情報)」

さい帯血移植のメリット

造血幹細胞の移植は、骨髄移植でも可能です。

しかし、さい帯血移植には骨髄移植と比べて以下のようなメリットがあります。

  1. 骨髄移植では、HLA(白血球の型)がすべて一致する必要がありますが、さい帯血移植ではその必要はありません。
    6つのHLA抗原のうち4つが一致していれば移植可能で、ほとんどの場合患者さんに適合するさい帯血が見つかります。
  2. 骨髄移植では、入院や全身麻酔など骨髄提供者(ドナー)に負担がかかりますが、さい帯血はすでに分娩の際に採取されており、提供者への負担がありません。
  3. さい帯血は冷凍保存されており、移植可能であることが確認されれば、移植までの期間は1ヶ月程度と、骨髄移植に比べてかなり短くてすみます。

デメリットとしては、胎盤から1回に得られる細胞の数が限定されていることです。

そのため移植は、子ども体重の軽い成人が中心で、体重の重い成人には細胞数が不足することもあります。

参照:東京都福祉保健局「さい帯血移植について」
参照:日本骨髄バンク「その他の造血細胞移植について」

どのような病気の治療に使用されるの?

さい帯血移植治療が用いられる病気には、以下のようなものがあります。

白血病

白血病のなかでも、抗がん剤による化学療法での治癒が難しいものに対して、さい帯血移植が用いられます。

再生不良性貧血

再生不良性貧血の場合は、免疫抑制療法か骨髄移植による治療が優先的に行われるのですが、いずれの治療も無効である場合に、さい帯血移植が行われます。

先天性免疫不全症

先天性免疫不全症の患者さんのほとんどは、体重の少ない乳幼児であり、免疫機能が未熟なため、拒絶反応が起こりにくいことから、さい帯血移植が適しているといわれます。

先天性代謝異常疾患

先天性代謝異常疾患には、ハーラー病ハンター病などのムコ多糖症副腎白質ジストロフィーなどがあります。

さい帯血移植治療した場合、生着率が悪いため、拒絶を防ぐための治療上の工夫が必要です。

参照:一般社団法人中部さい帯血バンク「提供したい」

さい帯血はどこで提供できるの?


出産後、普通は廃棄されるだけの胎盤や臍帯から採血されるさい帯血は、公的さい帯血バンクで調整、管理されたのち、白血病などの難病の治療に役立っています。

分娩時にしか採取できないものですが、出産を控え、さい帯血を提供したいという場合は、どこに連絡すればよいのでしょうか?

公的さい帯血バンクと提携している病院

さい帯血は、公的さい帯血バンクと提携している病院でのみ採血することが可能です。

移植に使用するためには、安全性を十分に考慮して国が定めた設備や技術、品質の基準を守ることが必要です。

処理と保存には無菌管理が必要で、治療に使用するまでは凍結保存しなければなりません。

現在、国が定めた基準を満たし許可を得ている公的さい帯血バンクは、全国に6つあります。

この6つの公的さい帯血バンクと契約している産科医療機関でのみ、さい帯血の提供は可能です。

出産予定の産院でさい帯血の寄付が可能かどうかは、それぞれの産院にお問い合わせいただくか、下記のURLでご確認ください。

参照:日本赤十字社 さい造血幹細胞移植情報サービス「さい帯血を提供したい」

どうして限定された医療機関でしか提供できないの?

移植を受ける患者さんの安全確保のためにも、さい帯血の処理と保存には無菌管理が欠かせません。

そのため、さい帯血の採取、処理、保存においては厳格な基準や条件が設けられています。

公的さい帯血バンクは、基準を満たす産科施設とあらかじめ契約を結んでおり、限定された医療機関でしか、さい帯血の提供はできないことになっているのです。

参照:日本赤十字社 さい造血幹細胞移植情報サービス「さい帯血を提供したい」

公的さい帯血バンクと民間さい帯血バンクとの違い

ママの善意により提供されたさい帯血を処理・保存し、白血病などの難病患者に提供するのが公的さい帯血バンクの役目です。

それとは別に、民間のさい帯血バンク(プライベートバンク)も存在しています。

両者は名前は似ていますが、システムや目的が異なります。

公的さい帯血バンク

公的さい帯血バンクとは、提供者に寄付してもらったさい帯血を保存し、他人(非血縁者)の治療のために提供する事業者をさします。

「移植に用いるさい帯血の品質の確保のための基準に関する省令」に記された基準に沿って、手続き・採取・調整・保存のすべてが行われているのです。

提供者には所有権はありませんが、その代わり保管料なども発生しません。

民間さい帯血バンク

胎児本人やご家族の疾病の治療、再生医療など私的使用のために、さい帯血を採取、保存する民間の営利団体です。

他人の治療のために提供されることはありません。
私的保存となりますので、さい帯血の保管料がかかります。

手続き・採取・調整・保管に関して、明確な基準が定められていません。

厚生労働省では、依頼者(保管料を払ってさい帯血を預けている人)の保護と安全性確保のため、さい帯血プライベートバンクの事業の届出を求めています。

2018年4月1日時点で、届出を提出しているのは、(株)ステムセル研究所(株)アイルの2社のみとなっています。

参照:日本産婦人科医会「さい帯血バンクによる造血幹細胞移植」
参照:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(さい帯血関連情報)」

日本産婦人科医会のスタンス

公的さい帯血バンクは、ママの善意を社会に役立てる事業です。

日本産婦人科医会のスタンスとして、基本的には、公的さい帯血バンクへのさい帯血提供を支援していく方針です。

民間さい帯血バンクについては、医師からはすすめないのが基本スタンスということ。

ただし、妊婦さんからの希望があれば、ケースバイケースで対応していくこととしています。

しかし、昨今、民間のさい帯血バンクによるさい帯血の不法使用などの問題が発覚していることを踏まえ、民間臍帯バンクへのさい帯血受け渡しについては、さい帯血の保管体制などが明確な事業者に限定すると、明記されています。

ちなみに厚生労働省では、民間さい帯血バンクを利用する場合は、事業者の業務内容や契約内容、契約終了時のさい帯血の処理などを十分に確認するように、利用者に呼びかけています。

参照:日本産婦人科医会「さい帯血バンクによる造血幹細胞移植」
参照:厚生労働省「赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(さい帯血関連情報)」


具体的な提供の流れ


ご自身の出産予定の産院、クリニックなどの医療機関が公的さい帯血バンクと契約している場合にのみさい帯血の寄付は可能ですが、その場合、具体的な手続きや流れはどのようになっているのでしょうか。

まずは、提供者が協力すべき4つの事項についてみてみましょう。

さい帯血提供者への4つのお願い

さい帯血の提供を希望する方は以下の4つの事項に協力する必要があります。

  1. 同意書への署名
  2. 問診への回答
  3. お母さんの感染症検査のため、出産時にお母さんの血液の採取(10ml前後)
  4. 出産後約6ヶ月頃に、赤ちゃんの健康に関するアンケートに回答

さい帯血の提供から公開までの流れ

出産予定の病院が公的さい帯血バンクの契約病院である場合、提供から公開までの流れは、以下のようになります。

  1. 妊婦さんがさい帯血の提供を希望する場合、病院側からさい帯血基準省令に定められた説明があります。
  2. 説明が納得するもので提供する意志が決定であれば、書類手続きを行います。(同意書、問診票、家族歴調査票などに必要事項を記入、署名)
  3. 分娩日当日、臍帯(へその緒)を切った後に、母体内に残る臍帯に針を刺して、さい帯血を採取します。
  4. 提携している公的さい帯血バンクに連絡し、搬送担当者に引き取りにきてもらいます。この時、母体血10ml前後も一緒に提出します。
  5. さい帯血バンクでは、専門のスタッフが、細胞数の計測や感染症の有無などの各種検査や細部処理を行います。品質に問題がなく、細胞数が十分であれば、摂氏マイナス196度の液体窒素の中で保存されます。
  6. 出産から6ヶ月くらいたったころ、赤ちゃんの健康に関するアンケートがお母さんの届くので、それに回答します。
  7. すべてにおいて問題がなければ、さい帯血が公開登録されます。

参照:日本骨髄バンク「その他の造血細胞移植について」
参照:一般社団法人中部さい帯血バンク「提供したい」

さい帯血バンクで提供できる人、できない人

さい帯血基準省令において、母親と新生児の安全を第一に考え、以下のようなケースでは、さい帯血の採取をおこなわないとされています。

  • 双子や三つ子など多胎妊娠の場合
  • 妊娠合併症や、自己免疫疾患などを妊婦さんが患っている場合
  • 遺伝性血液疾患を持つ近親者がいる場合
  • 出産時に通常の分娩以外の処置が必要になる場合

また、さい帯血の摂取量が十分でなかった場合は、採取しても保存されません。

参照:厚生労働省「移植に用いるさい帯血の品質の確保のための基準に関する省令の運用に関する指針 (ガイドライン)の制定について」

出産時にママができるもうひとつのこと

ひとつの命が生まれると同時に、別の命を救うためにできること。
それがさい帯血献血です。

公的さい帯血バンク事業は、全国のお母さんの善意に支えられて、今まで多くの白血病患者さんの治療のためにさい帯血を提供してきました。

もし、ご自身が出産予定の産院が、公的さい帯血バンクと契約している場合は、さい帯血献血について一度検討してはいかがでしょうか。