不妊・妊活サポートのNPO法人Fineを取材!気軽に妊活の話をできる社会に

子どもが欲しいけど、なかなか授からないという夫婦が増えています。
しかし誰にも話せず、どこに相談していいのかもわからないという方も多いようです。

このような、不妊に関する悩みをサポートしているのがNPO法人Fineです。
今回は、NPO法人Fineの理事長をされている松本亜樹子さんにお話をうかがいました。

不妊や妊活で悩む人たちをサポートするというNPO法人Fineとは、どのような団体なのでしょうか。

NPO法人を設立した経緯とは?

松本亜樹子さん

編集部

NPO法人Fineを設立した経緯について、うかがってもよろしいでしょうか?

「これをしたい!」という明確なビジョンがあったわけではなく、「不妊で悩んでいる人達のためにできることはないだろうか」という感じではじまったのがFineです。

私を含め、設立時に集まった4人がそれぞれ不妊治療をしていたんです。

当時はSNSもなかったので、インターネットの掲示板でやり取りをしていましたが、自分も不妊治療をしていたけれど、全国にこんなに不妊の人がいるということにびっくりしました。

ほっとしたというか、心が軽くなったというか。「自分だけじゃないんだ」という感じで。

その掲示板でやり取りをしていた友達の一人が、「そういう活動をできたら」と言ったのがきっかけですね。

編集部

そうだったんですね

団体を立ち上げるにあたって、自分たちがしんどかったことや困ったこと…たとえば「治療費が高いよね」とか「周りに相談してもわかってもらえないよね」とか。

そういうことで困っていた経験があったので、それを何とかできたらいいなという思いがありました。

不妊体験者だけのコミュニティでは社会環境が変わらない

編集部

不妊って悩みますよね。

そうですね。不妊を経験した人でならではの悩みがあります。

「年賀状に赤ちゃんの写真があるとツライ」というのもそのうちのひとつで、年賀状の時期になると、掲示板でもその話題があがってきます。

最初は「ツラいよね」「わかる!」という感じだったのが、そのうち「一緒に不妊治療してたのに、赤ちゃんが生まれたら赤ちゃんの写真付きで年賀状を送ってくるなんてひどい」という書き込みに発展していきます。

そこに「そんなネガティブなこといってたら駄目だよ」という人がでてきて、ケンカがはじまるんです。

しばらくすると収まるんですが、お盆やひなまつり、クリスマスなどのイベントのたびに、そういった炎上を繰り返していました。

どうして同じことを繰り返しているのだろうと思っていたんですけど、同じ人が言っているわけではないんですよね。

そこは不妊の掲示板ですから、妊娠した人はいなくなって、また新たに人が入ってくるわけです。

私は何年も妊娠できなくて、その掲示板にいたのでずっと見ていたわけですが、「みんな同じ悩みを抱えているんだ」と思ったのと同時に、この掲示板は不妊で悩む人しか見ていないから、ほかの人にはこういった悩みが理解されないんだと気がつきました。

不妊治療をしている人だけが集まっているコミュニティで、つらさや悩みを話しても、周りの人には届いてないのです。
だから、いつまでたっても社会環境が変わらないんですよね。

編集部

確かにそうですね

この声はしかるべき所に届けなければ、私たちを取り巻く環境は変わらないと思いました。

それには個人ではなく団体でなければならないということで、それがFineのはじまった経緯です。

立ち上げた当時はFacebookやTwitterもなくて、まだ「妊活」という言葉もなかったです。

不妊という言葉しかなくて、不妊治療も今ほどたくさんはなくてマイノリティな感じでした。体外受精ができる施設も今ほどなかったですし。

今は妊活をしている人が増えている

日本では、不妊症で悩んでいる夫婦が5.5組に1組というデータがあり、日本で実施されている不妊治療の数は年々増加傾向にあります。

結婚年齢が遅くなりつつあるので、子どもを産む年齢も遅くなっているんですね。
生理があれば妊娠できると思っている人が多いようですが、卵巣は年を取るものです。

また卵子は増えることがありません。
おなかの中にいる3ヶ月ころが一番多くて、あとは減り続けます。

編集部

なるほど…!結婚年齢が遅くなることで妊娠しにくくなっているんですね。

男性の精子も10年、20年前と比べると減っているというデータもあり、自然妊娠しにくくなっているといわれています。

そのため妊活をおこなっている夫婦が増えているのです。

Fineがおこなっている妊活サポートとは?

当事者同士のおしゃべりの会(イメージ)

編集部

Fineでは、どのような妊活サポートをおこなっているのですか?

Fineでは不妊(治療)の悩みを4つに大別しています。

  1. 精神的負担
  2. 身体的負担
  3. 経済的負担
  4. 時間的負担

です。

それぞれに対して、当事者の立場でできるサポートをおこなっていますが、なかでも(1)にあたる「心の問題」のサポートには、とくに注力しています。

妊活では心のサポートも重要です。

Fineの設立時におこなったアンケートでも、不妊に悩んでいる方の78%が不妊にはカウンセリングが必要と感じているという調査結果がでています。

欧米ではカウンセリングは敷居がひくく、日常的におこなわれる身近なものだそうですが、日本では耐え忍ぶのが美徳という風潮もあり、カウンセリングはまだまだ一般的ではありません。

不妊に関していえば、不妊に詳しいカウンセラーさんがそもそもまだ少なく、クリニックや病院の数と比較しても、十分であるとはいえないと思います。

以前、メンバーがカウンセリングを受けたときに、カウンセラーさんがまだ若い独身の方で、「不妊の『なにがつらいのか』を説明するところから、はじめなければいけなかったので、とても疲れた」という意見がありました。

その点、当事者同士であれば「昨日のHMGがさ…」「あれ痛いよね」でわかり合えるですよね。

わからない人にはちんぷんかんぷんな話も、当事者であれば言わずもがなで伝わることが、たくさんある。

不妊ピア・カウンセラー養成講座

そうであれば、「当事者がカウンセリングをできるようになればいいんじゃないの?」ということでカウンセラー養成講座を立ち上げました。

日本における生殖心理(不妊)カウンセリングの第一人者平山史朗先生、小倉智子先生が全面協力してくださって、カリキュラムを作りました。

実際にやってみて直してというトライ&エラーを1年間繰り返して、やっと開講したのが「不妊ピア・カウンセラー養成講座」です。
今は、全国で130名くらいの認定者がいます。

編集部
不妊ピア・カウンセラーになった方たちは、どういった活動をしているのですか?

Fineに所属してFineが運営するピア・カウンセリングで活動している方もいます。

東京近郊以外でも、地方でファインの活動としてピア・カウンセリングをおこなってる方や、個人でピア・カウンセラーとして活躍している方もいますよ。

リアルなコミュニケーションの場を作る重要性

Fine祭りのスタッフ集合写真

編集部

Fineさんは、ピア・カウンセリングを含めて、リアルなコミュニケーションを取るイベントを開催されてますよね。
Fine祭りなどもあるようですね。

もともとは、おしゃべり会という形で開催していたんです。気持ちを共有できる人がいるというだけ心が楽になるんですよね。

それまで、東京で開催したことはあったのですが、2007年にはじめて大阪でおしゃべり会を開催したんです。

おしゃべり会では、悩みのカテゴリーをわけることでお話がしやすいようになっています。

たとえば、

  • 不妊治療をはじめたばかりの人
  • 体外受精を何回もしている人
  • 二人目不妊の人
  • 男性不妊の人

などですね。

体験したほとんどの方に、「はじめて不妊の話を人にできた」と喜んでいただけました。

そのいっぽうで、「これまで話すことができなかったんだ」と切なく感じたのです。

どうしたらこのような状態を改善できるのかを、ずっと考えていて、2008年のゴールデンウイークに「祭りだ!」と思いついたんです。

「不妊の人たちで集まって、思い切り楽しいお祭りをしようよ」と。

ドクターやナースの講演に加えて、健康食品やグッズの出展、趣味の手作りワークショップやカウンセリング、占いからまつげパーマまで、とにかく参加者の笑顔が増えればなんでもありの楽しいお祭りをしようと考えたんです。

そこで2008年11月に、ジャガー横田さんご夫妻をゲストにお迎えしてイベントを開催しました。

妊活の話をもっとできる社会になることが大切

編集部

不妊に関する話題はタブー視される傾向があり、なんとなく言いにくい雰囲気もありますよね。

聞いちゃいけない、触れちゃいけないと思わずに普通に接していただくのが一番だと思います。

話すことが心理的な負担を軽くすることにもつながるので、不妊の話が特別扱いされることなく、気軽にできるようになるといいですよね。

今後の活動について

編集部

今後はどのような活動をおこなっていく予定ですか?

これまでの活動に加え、男性不妊のサポートや、企業の理解を促す活動にもいっそう力を入れていきたいと考えています。

最近は男性不妊の方も増えており、不妊の原因の半分くらいは男性にもあるといわれています。

不妊や妊活は女性がするものというイメージがあるためか、女性が検査をして異常がなければ次に男性が検査をするという流れが多いんです。

それだと、男性側が「自分に原因があるのでは?」という不安から検査に行くタイミングが遅れて治療が進まないこともあるので、ぜひカップルで一緒に検査を受けた方がいいと思います。

編集部

「企業の理解を促す活動」とはどういうことでしょうか

企業で、仕事と妊活を両立できる環境整備に貢献できればと考えています。

NPO法人Fineが実施した「仕事と不妊治療の両立に関するアンケート Part 2」(2017年実施、回答者5,526人)によると、5人に1人が仕事と不妊治療の両立ができずに辞めているという現状が明らかになりました。

回答者の約6割が働き盛りの30代。
仕事も脂がのってきて、部下を持ったりプロジェクトリーダーを務めたりしている年齢です。

コメントでは「仕事は辞めたくない。でも、今は治療を優先させざるを得ず、これ以上職場に迷惑をかけることはできない」と苦渋の決断で不妊退職をする方が多くみられました。

これって企業にとっても社会にとっても、大きな損失になると思うんです。

だから、企業で両立できる風土や仕組みを作ってほしいと思っています。

そのためには、トップの方に現状を知ってもらわなければいけないので、企業への訴えかけていく必要があると考えています。

そして、そのような企業努力をしている企業に対して、国や自治体からのサポートをぜひお願いしたいと願っています。

今は企業もギリギリで頑張っているところが多く、一企業の努力だけではなかなか賄えないところもあると思いますので。

編集部

公的機関へ不妊治療の啓発活動もされているとお聞きしましたが、具体的にはどういったことをされているのですか?

要望書や、集めた署名を提出したり、国会で不妊の勉強会を開いたこともあります。

政府機関に不妊の現状を伝えて、こういった仕組みやサポートが欲しいという提言もおこなっています。

いまだに、不妊のことを話せないという人が多くて、話せないことの弊害がすごくあると感じています。

だから隠さなくてもいいように、一人で抱え込まなくてすむようになればいいなと思いますね。

【プロフィール】
松本亜樹子長崎県長崎市で生まれ。モデルやアナウンサーの経験を生かした人材育成から、企業の人材育成・研修など幅広く活動。
自身の不妊経験から、不妊でつらい思いをしている人たちをサポートするべく、NPO法人Fineを立ち上げる。
<NPO法人FineのWEBサイト>

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